判旨
抵当権者が抵当権を実行して競売申立ての登記がなされた後に、抵当不動産を賃借した者は、その賃借権をもって抵当権者および買受人に対抗することはできない。
問題の所在(論点)
抵当権の実行としての競売申立ての登記がなされた後に成立した賃借権について、賃借人は抵当権者や買受人に対してその権利を主張(対抗)できるか。
規範
抵当権の実行による競売手続において、競売申立ての登記がなされた後に設定された賃借権は、抵当権者および競落人(買受人)に対して対抗力を有しない。
重要事実
抵当権者が抵当権に基づき、対象となる不動産について競売実行の手続きに着手し、競売申立ての登記がなされた。上告人は、この登記がなされた後に、当該不動産を賃借した。その後、不動産が競落されたことにより、賃借権の対抗力が問題となった。
あてはめ
本件において、上告人が不動産を賃借したのは、抵当権者が競売申立ての登記を完了した後である。競売申立ての登記は、抵当権の実行を公に公示するものであり、その後に設定された利用権は、競売手続の目的を阻害する。したがって、上告人の賃借権は、先行する抵当権の実行手続およびその結果としての競落(売却)に対して優先する効力を認められない。
結論
競売申立ての登記後の賃借人は、抵当権者および買受人に対し賃借権を対抗できないため、上告人の主張は認められない。
実務上の射程
抵当権設定後の賃借権の対抗力をめぐる典型的な判例である。現行法(民法395条等)の解釈運用において、競売手続開始後の不法占拠や短期賃貸借制度廃止後の明渡し猶予制度との関係で、対抗力の有無を判断する際の基礎となる。答案上は、抵当権と賃借権の優劣を論じる際に、差押え(登記)の前後という時間的先後関係を基準にする根拠として引用する。
事件番号: 昭和38(オ)407 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 棄却
国税滞納処分の差押登記後の家屋賃借人が家屋の引渡を受けても、右賃貸借を競落人に対抗できない(昭和二九年(オ)一三号、昭和三〇年一一月二五日二小判決参照)から、賃借人から右家屋の一部を転借して占有するに至った者も占有権をもって競落人に対抗できない。