民法第六〇二条所定の期間を超える建物賃貸借は、抵当権の登記後に成立したものであるときは、これを登記しても、右期間の範囲内においてもこれをもつて抵当権者兼競落人に対抗し得ない。
民法第六〇二条の期間を超える抵当権物賃貸借の抵当権者兼競落人に対する効力。
民法395条
判旨
抵当権設定後に成立した賃貸借の賃借人は、たとえ引渡しを受けていても、抵当権者および競落人に対してその賃借権を対抗できず、賃貸人の地位も承継されない。
問題の所在(論点)
抵当権設定後の賃借権が競落人に対抗できるか。また、競落人が賃借権の存在を知って競落した場合に賃貸人の地位を承継するか。さらに、賃借人の補助者として居住する者に独自の占有権限が認められるか。
規範
抵当権設定後に成立した建物賃貸借は、民法395条(当時の規定)により、抵当権者および競落人に対抗することができない。また、競落人が賃貸借の存在を承知の上で買い受けたとしても、当然に賃貸人の地位を承継するものではない。
重要事実
被上告会社は昭和29年12月13日に本件家屋に抵当権を取得した。その後、昭和30年1月24日に株式会社Dが本件家屋を賃借し引渡しを受けた。その後、被上告会社が抵当権に基づき本件家屋を競落し所有権を取得した。株式会社Dの店員である上告人A1およびその妻A2が同所に居住していたところ、被上告会社より明け渡しを求められた。
あてはめ
本件賃貸借は抵当権設定登記よりも後に成立したものであるため、民法395条により対抗力を持たない。被上告会社が賃貸借の事実を承知して競落したとしても、対抗力のない賃借権について賃貸人の地位を承継する義務は生じない。また、上告人A1およびA2は株式会社Dの店員およびその家族として居住しているに過ぎず、法人とは独立した占有権限を主張していないため、独自の占有権限は認められない。
結論
株式会社Dは賃借権を被上告会社に対抗できず、上告人らも独自の占有権限を持たないため、被上告会社の明渡請求は認められる。
実務上の射程
抵当権設定後の賃借権の対抗力に関する基本判例である。現行法下の短期賃貸借制度廃止後の運用においても、抵当権に後れる賃借権の劣後性を確認する際に引用される。また、賃借人の同居家族や従業員の占有の性質(占有補助者)を検討する際の参考にもなる。
事件番号: 昭和33(オ)903 / 裁判年月日: 昭和35年10月14日 / 結論: 棄却
賃貸中の家屋に対する強制競売開始決定が債務者に送達された後、債務者が賃借人と何等合理的理由なしに賃料を半額に減額する旨合意しても、これをもつて競落人に対抗することはできない。