判旨
抵当権設定登記後に登記された民法602条所定の期間を超える賃貸借は、抵当権者に対抗することができず、抵当権者は当該賃貸借の設定がないものとして抵当権を実行し得る。
問題の所在(論点)
抵当権設定登記後になされた民法602条の期間を超える賃貸借登記について、抵当権者はその存在を無視して抵当権を実行し、登記の抹消を求めることができるか。
規範
抵当権設定登記後に、民法602条に定める期間(建物については3年)を超える賃貸借が設定され、その登記がなされた場合であっても、当該賃貸借は抵当権者に対抗することができない。抵当権者は、抵当権の優先効に基づき、当該賃貸借の存在に拘束されることなく抵当権を実行することができ、競落後、その賃貸借登記は抹消されるべき運命にある。
重要事実
上告人(抵当権者)は、本件家屋について抵当権を有し、その設定登記を済ませていた。その後、債務者である被上告人らが、本件家屋について期間を15年とする賃貸借契約を締結し、その登記を完了させた。上告人は、当該賃貸借が抵当権設定後のものであることを理由に、抵当権の実行を妨げないものであると主張して争った。
あてはめ
本件賃貸借は期間が15年であり、民法602条が定める建物の短期賃貸借の期間(3年)を明らかに超えている。また、その登記は上告人の抵当権設定登記後になされたものである。したがって、この賃貸借は抵当権者たる上告人に対抗し得ない。上告人は、優先する抵当権に基づき、賃貸借が存在しないものとして競売手続を進めることが可能であり、競落が確定すれば、当該登記は裁判所の嘱託により抹消されるべきものである。
結論
抵当権設定後の民法602条超の賃貸借は抵当権者に対抗できず、抵当権者はこれを無視して抵当権を実行できる。上告人の主張を認め、本件上告を棄却する。
実務上の射程
抵当権と後位賃貸借の優劣に関する基本判例である。現行法下では短期賃貸借保護制度(旧民法395条)が廃止され、抵当権設定後の賃貸借は一律に抵当権者に対抗できないのが原則であるが(民法395条参照)、設定後の登記が抵当権を害する場合の処理や、競売に伴う嘱託抹消の理屈を理解する上で重要な射程を持つ。
事件番号: 昭和33(オ)235 / 裁判年月日: 昭和36年6月23日 / 結論: 棄却
民法第六〇二条所定の期間を超える建物賃貸借は、抵当権の登記後に成立したものであるときは、これを登記しても、右期間の範囲内においてもこれをもつて抵当権者兼競落人に対抗し得ない。
事件番号: 昭和33(オ)462 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料値上げの合意が地代家賃統制令に違反して無効である場合、当該合意に基づく不足分の不払を理由とする賃貸借契約の解除は認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)と賃借人(被上告人)との間で、本件建物の賃料値上げの合意がなされた。賃貸人は、賃借人が昭和25年9月分の賃料につき、値上げ後の不足分…
事件番号: 昭和33(オ)410 / 裁判年月日: 昭和36年8月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約において、賃料支払の遅滞があった場合に催告なしに契約を解除できる旨の失権約款は、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。特段の事情がない限り、民法541条の規定にかかわらず、無催告解除による失権の効力が認められる。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃借人)との間で成立…
事件番号: 昭和44(オ)932 / 裁判年月日: 昭和44年12月11日 / 結論: 棄却
抵当権設定後競売開始決定までの間に設定された短期賃貸借は、民法六〇二条所定の期間後は当然に効力を失い、法定更新されない。