判旨
賃料値上げの合意が地代家賃統制令に違反して無効である場合、当該合意に基づく不足分の不払を理由とする賃貸借契約の解除は認められない。
問題の所在(論点)
地代家賃統制令に違反する賃料値上げ合意の効力、および統制額を超える請求に対する一部提供が有効な弁済の提供として認められ、賃料不払による解除を阻止できるか。
規範
地代家賃統制令に基づく統制額を超える賃料値上げの合意は、同法令の強行法規的性質から無効となる。また、債務者が弁済の提供をする際に行った弁済充当の指定は、その内容が客観的事実と矛盾しない限り、有効な弁済の提供として認められる。
重要事実
賃貸人(上告人)と賃借人(被上告人)との間で、本件建物の賃料値上げの合意がなされた。賃貸人は、賃借人が昭和25年9月分の賃料につき、値上げ後の不足分を含まない1,000円のみを提供したことをもって賃料支払遅滞(不払)であると主張し、本件賃貸借契約の解除および建物の明け渡しを求めて提訴した。原審は、当該値上げ合意が当時の地代家賃統制令等に違反し無効であると判断した。
あてはめ
本件における賃料値上げの合意は、当時の地代家賃統制令および物価庁告示所定の統制額を超えているため無効である。無効な値上げ合意に基づく不足分は債務として発生しない。賃借人が昭和25年9月分の賃料および延滞賃料の月賦金として1,000円を提供したことは、有効な債務の範囲内での弁済充当の指定を伴う提供といえる。したがって、賃貸人が主張する値上げ不足分を理由とする支払遅滞の事実は認められない。
結論
本件賃料値上げ合意は無効であり、賃借人の提供した額で正当な賃料支払がなされたといえるため、賃料不払を理由とする賃貸借契約の解除請求は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)882 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の和解において建物の明渡猶予期間を定め、その期間中に家賃相当額を損害金名義で支払う旨の約定がなされたとしても、直ちに賃貸借契約が成立したものとは認められない。したがって、当該和解に基づく占有に対して借家法(現:借地借家法)の適用はない。 第1 事案の概要:当事者間で建物の明渡等について裁判上…
強行法規(地代家賃統制令や借地借家法等)に反する特約の無効を前提とした解除の成否を論ずる際の素材となる。特に、債権者が過大な請求をしている場面で、債務者が本来の債務額の範囲で提供した場合の債務不履行責任の否定を導く論理として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)265 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
一 地代家賃統制令の統制額の増額があつても、約定賃料がその額まで自動的に当然増額されるものではない。 二 賃借権確認の判決においては、その賃借権を特定しうるかぎり、常にその賃料額まで判決主文に明示しなければならないものではない。
事件番号: 昭和44(オ)332 / 裁判年月日: 昭和44年7月24日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部に賃借権を有する者は、右賃借権について権利指定の届出をした場合であつても、区画整理事業の施行者から仮換地上の使用収益部分の指定を受けないかぎり、仮換地を現実に使用収益する権限を有しない。