従前の土地の一部に賃借権を有する者は、右賃借権について権利指定の届出をした場合であつても、区画整理事業の施行者から仮換地上の使用収益部分の指定を受けないかぎり、仮換地を現実に使用収益する権限を有しない。
従前の土地の一部の賃借権者が権利指定の届出をしたが、区画整理事業の施行者から仮換地上に使用収益すべき土地の指定がない場合と右賃借権者の仮換地の使用収益権
旧特別都市計画法13条,土地区画整理法98条
判旨
土地区画整理事業において、従前の土地の賃借権を有する者は、施行者から仮換地の使用収益部分の指定を受けない限り、仮換地を現実に使用収益することはできない。
問題の所在(論点)
土地区画整理事業において、従前の土地の賃借権者が権利指定の届出を行っている場合、施行者による使用収益部分の指定を受ける前であっても、仮換地を使用収益する権原を有するといえるか。土地明渡請求の正当性が問われた。
規範
従前の土地について賃借権を有する者は、施行者から仮換地について使用収益部分の指定を受けることにより、はじめて当該部分につき現実に使用収益をなしうるに至る。したがって、権利指定の届出がなされていても、施行者による具体的な指定がない段階では、仮換地につき現実に使用収益をなす権原を有しない。
重要事実
上告人は、土地区画整理事業の施行区域内にある従前の土地について賃借権を有しており、特別都市計画法施行令に基づき権利指定の届出を行った。しかし、施行者である青森県知事から、上告人が使用収益すべき仮換地上の特定部分についての指定はまだなされていなかった。この状況下で、上告人は本件係争地(仮換地の一部)を占有し建物を所有していたため、所有者である被上告人から建物収去および土地明渡を求められた。
事件番号: 昭和34(オ)326 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部について賃借権を有する者はたとえその賃借部分が仮換地に含まれていても、賃借権について仮に権利の目的となるべき部分の指定を受けないかぎり、右賃借部分の使用権を有しない。
あてはめ
本件において、上告人は従前の土地の賃借権について届出を済ませているものの、施行者である知事から仮換地における具体的な使用収益部分の指定をいまだ受けていない。判例の法理に照らせば、このような指定がない段階では、上告人は仮換地を現実に使用収益する法的権原をいまだ取得していないといえる。したがって、上告人による本件係争地の占有は権原のないものであり、所有者である被上告人による建物収去・土地明渡請求を拒むことはできない。
結論
施行者による使用収益部分の指定がない限り、賃借権者は仮換地を使用収益できない。よって、被上告人の請求を認容した原審の判断は正当である。
実務上の射程
仮換地指定に伴う使用収益権の発生時期に関する基本判例である。答案上は、仮換地上の占有者の権原を検討する際、単に従前の土地に権利があることや届出があることだけでは足りず、施行者による「個別具体的な使用収益部分の指定(土地区画整理法等に基づく処分)」が有効な占有権原の発生要件となることを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和34(オ)325 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理に伴う仮換地の指定により、従前の土地が使用収益できなくなった場合であっても、土地区画整理施行者への申告等を通じて仮換地を使用収益し得る地位にある以上、賃借権存在の確認を求める訴えの利益が認められる。 第1 事案の概要:賃貸借契約の当事者間で、当該契約の存否が争われた事案である。対象土地…
事件番号: 昭和42(オ)744 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: その他
仮換地の指定後、従前の土地が分割譲渡されて所有者を異にする二筆以上の土地となつた場合においては、施行者により各筆に対する仮換地を特定した変更指定処分がされないかぎり、各所有者は、仮換地全体につき、従前の土地に対する各自の所有地積の割合に応じ使用収益権を共同して行使すべき、いわゆる準共有関係にあるものと解すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)842 / 裁判年月日: 昭和40年3月10日 / 結論: 破棄差戻
従前の土地の一部を賃借する者は、土地区画整理法第八五条の定める権利申告の手続をして土地区画整理事業の施行者からかりに使用収益しうべき部分の指定を受けないかぎり、仮換地につき現実に使用収益をすることができない。