仮換地の指定後、従前の土地が分割譲渡されて所有者を異にする二筆以上の土地となつた場合においては、施行者により各筆に対する仮換地を特定した変更指定処分がされないかぎり、各所有者は、仮換地全体につき、従前の土地に対する各自の所有地積の割合に応じ使用収益権を共同して行使すべき、いわゆる準共有関係にあるものと解すべきである。
仮換地の指定後従前の土地が分割譲渡された場合と仮換地に対する使用収益権
土地区画整理法99条,土地区画整理法129条,特別都市計画法(昭和21年法律第19号)14条,民法249条,民法264条
判旨
仮換地の指定後、従前の土地が分割譲渡された場合、各土地の所有者は施行者による仮換地の変更指定があるまで、仮換地全体について各所有地積の割合に応じた使用収益権を準共有する。また、換地を定めないことへの同意のみでは、既存の仮換地上の使用収益権は消滅しない。
問題の所在(論点)
仮換地指定後に従前の土地が分筆譲渡された場合、各所有者はどのような形で仮換地の使用収益権を取得するか。また、換地不交付の同意によって既存の仮換地使用収益権は消滅するか。
規範
仮換地の指定後、従前の土地が分割譲渡され所有者が異なった場合でも、各所有者は分筆前の土地に指定された仮換地の使用収益権を取得する。ただし、施行者による仮換地の特定・変更指定がなされるまでは、各所有者は仮換地全体につき、各自の所有地積の割合に応じて使用収益権を共同して行使すべき準共有関係に立つ。また、換地を定めず金銭清算することへの同意(土地区画整理法90条等)は、施行者が換地計画を定める際の判断に資するにとどまり、当然に既になされた仮換地指定の効力を変更・消滅させるものではない。
重要事実
土地区画整理事業の施行者から169坪の従前地に対し120.5坪の仮換地が指定された。その後、従前地の所有者Dは、従前地から計127坪余を分筆して他へ譲渡し、残った41坪余の土地(本件土地)を上告人が取得した。上告人は、仮換地のうち本件土地の面積に対応する特定部分の使用収益権を専有していると主張した。原審は、前主Dが「換地を受けず金銭清算すること」に同意していたことを理由に、上告人の使用収益権を否定したが、仮換地指定の変更処分はなされていなかった。
事件番号: 昭和44(オ)332 / 裁判年月日: 昭和44年7月24日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部に賃借権を有する者は、右賃借権について権利指定の届出をした場合であつても、区画整理事業の施行者から仮換地上の使用収益部分の指定を受けないかぎり、仮換地を現実に使用収益する権限を有しない。
あてはめ
上告人は、分筆後の本件土地の所有権に基づき仮換地の特定部分を専有する旨主張するが、施行者による仮換地の変更指定がない以上、特定部分の専有は認められない(主たる請求は失当)。一方で、上告人は分筆前の土地に対応する仮換地全体について、地積割合に応じた使用収益権を準共有しているといえる。原審は前主による換地不交付の同意を理由に権利を否定したが、当該同意は換地計画上の定めに影響し得るにすぎず、既存の仮換地指定による使用収益権を消滅させる法的根拠にはならない。したがって、上告人が準共有関係に基づく権利を有し得るとする予備的請求について判断を誤っている。
結論
主たる請求(特定部分の専有)は否定されるが、予備的請求(準共有関係の確認)については、換地不交付の同意のみで権利は消滅しないため、さらに審理を尽くすべきとして差し戻した。
実務上の射程
土地区画整理における仮換地の法的性質に関する重要判例。分筆後の各土地所有者の権利関係が「地積割合に応じた準共有」になるという枠組みは、答案作成上、仮換地の対抗関係や使用権の範囲が問われる事案で不可欠な規範である。
事件番号: 昭和43(オ)522 / 裁判年月日: 昭和47年12月14日 / 結論: 棄却
一、従前の土地の一部につき甲の有していた賃借権を乙が適法に譲り受けたが、別に賃借権を主張する者があつたため、土地区画整理事業施行者が、右紛争の経緯を考慮して、甲に対し、右従前の土地に対する換地予定地(仮換地)につき賃借権の目的となる部分の指定通知をしたときは、乙は、右部分につき使用収益権を取得すると解すべきである。 二…
事件番号: 昭和34(オ)842 / 裁判年月日: 昭和40年3月10日 / 結論: 破棄差戻
従前の土地の一部を賃借する者は、土地区画整理法第八五条の定める権利申告の手続をして土地区画整理事業の施行者からかりに使用収益しうべき部分の指定を受けないかぎり、仮換地につき現実に使用収益をすることができない。
事件番号: 昭和44(オ)26 / 裁判年月日: 昭和44年4月22日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部の賃借人は、特段の事情のないかぎり、土地区画整理事業の施行者から、使用収益部分の指定を受けることによつて、はじめてその部分について、現実に使用収益をすることができる。