一、従前の土地の一部につき甲の有していた賃借権を乙が適法に譲り受けたが、別に賃借権を主張する者があつたため、土地区画整理事業施行者が、右紛争の経緯を考慮して、甲に対し、右従前の土地に対する換地予定地(仮換地)につき賃借権の目的となる部分の指定通知をしたときは、乙は、右部分につき使用収益権を取得すると解すべきである。 二、賃料額はおおむね他の借地の賃料額に準ずる旨の約定がある場合には、その額が具体的に定められていなくても、土地賃貸借契約が有効に成立する。
一、従前の土地の一部についての賃借権の帰属に紛争がある場合に賃借権の目的となる換地予定地(仮換地)の部分の指定通知が有効にされたと認められた事例 二、賃料額の合意の程度と賃貸借の成立
特別都市計画法13条,土地区画整理法98条,民法601条
判旨
土地区画整理事業において、賃借権の帰属に争いがあるため施行者が真実の権利者の認定を保留し、前賃借人に対し換地予定地の使用収益部分の指定をした場合であっても、真実の権利者は当該指定により使用収益権を取得する。
問題の所在(論点)
土地区画整理事業において、賃借権の帰属に争いがあるために施行者が前賃借人に対して使用収益部分の指定を行った場合、真実の賃借権譲受人は当該指定に基づき換地予定地の使用収益権を取得できるか。
規範
従前の土地の賃借権者は、権利申告をして施行者から使用収益すべき部分の指定を受けない限り、原則として換地予定地の使用収益ができない。もっとも、賃借権の帰属に紛争があり、施行者が真実の権利者の認定を保留する趣旨で、便宜上、前賃借人(既に権利申告済みであった者)に対して使用収益部分の指定をした場合には、前賃借人から適法に権利を譲り受けていた真実の権利者が、当該指定によって換地予定地の使用収益権を取得する。
重要事実
Dは、従前の土地の賃借人Eから適法に賃借権を譲り受けた。しかし、上告人が自己に賃借権があると主張して紛争が生じたため、施行者(知事)は、当初なしたDへの指定を取り消した。その上で、知事は紛争の経緯を考慮し、真実の権利者の認定を保留する趣旨で、既に権利申告をしていた前賃借人Eに対し、Dに対するものと同一内容の使用収益部分の指定通知を行った。
事件番号: 昭和34(オ)842 / 裁判年月日: 昭和40年3月10日 / 結論: 破棄差戻
従前の土地の一部を賃借する者は、土地区画整理法第八五条の定める権利申告の手続をして土地区画整理事業の施行者からかりに使用収益しうべき部分の指定を受けないかぎり、仮換地につき現実に使用収益をすることができない。
あてはめ
本件では、使用収益部分の指定自体はなされている。知事が前賃借人Eに対して指定を行ったのは、Dと上告人の紛争を踏まえ、真実の権利者の認定を保留しつつ事業の進行を図る便宜上の措置にすぎない。そうであれば、Eから適法に賃借権を譲り受けていた真実の権利者たるDが、当該指定の効力により実質的に使用収益権を取得したと解するのが相当である。上告人は、Dの申告が上告人の承諾なく名義変更されたもので無効であると主張するが、地主側もDに協力しており無効とはいえない。
結論
真実の賃借権者であるDは、前賃借人Eに対してなされた使用収益部分の指定により、本件換地予定地の使用収益権を取得する。
実務上の射程
換地予定地の指定(または仮換地の指定)は、使用収益できる「場所」を特定する対物的な側面を有する。本判決は、指定の相手方が真実の権利者と異なる名義(前権利者等)であっても、それが権利関係の混乱による保留的措置である場合には、真実の権利者に使用収益権の帰属を認める実質的な判断枠組みを示したものであり、形式的な指定名義のみにとらわれない解釈として重要である。
事件番号: 昭和44(オ)26 / 裁判年月日: 昭和44年4月22日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部の賃借人は、特段の事情のないかぎり、土地区画整理事業の施行者から、使用収益部分の指定を受けることによつて、はじめてその部分について、現実に使用収益をすることができる。
事件番号: 昭和44(オ)1207 / 裁判年月日: 昭和48年12月7日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部を賃借する者は、土地区画整理事業施行者から仮換地につき使用収益すべき部分の指定を受けなかつたとしても、従前の土地の所有者との間で、仮換地の特定部分について使用収益できる旨合意し、かつ、右特定部分がそのまま本換地の一部となることを条件として換地処分終了後もこれを賃貸借する旨合意した場合には、従前の土地の所…
事件番号: 昭和33(オ)1063 / 裁判年月日: 昭和36年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理において、従前の宅地の一部に賃借権を有する者は、施行者による仮換地の指定を受けない限り、当然には仮換地を使用する権限を有しない。仮換地指定が従前の賃借地を含んでなされた場合であっても、土地区画整理法99条3項に基づき、賃借人はその効果として使用権限を取得することはない。 第1 事案の概…
事件番号: 昭和42(オ)744 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: その他
仮換地の指定後、従前の土地が分割譲渡されて所有者を異にする二筆以上の土地となつた場合においては、施行者により各筆に対する仮換地を特定した変更指定処分がされないかぎり、各所有者は、仮換地全体につき、従前の土地に対する各自の所有地積の割合に応じ使用収益権を共同して行使すべき、いわゆる準共有関係にあるものと解すべきである。