従前の土地の一部を賃借する者は、土地区画整理事業施行者から仮換地につき使用収益すべき部分の指定を受けなかつたとしても、従前の土地の所有者との間で、仮換地の特定部分について使用収益できる旨合意し、かつ、右特定部分がそのまま本換地の一部となることを条件として換地処分終了後もこれを賃貸借する旨合意した場合には、従前の土地の所有者との関係では、仮換地の右特定部分を適法に占有することができ、かつ、仮換地がそのまま本換地となつたときは、本換地の右特定部分について賃借権を主張することができる。
地区画整理事業施行者から使用収益部分の指定を受けなかつた従前の土地の一部の賃借人と従前の土地の所有者との間における仮換地の一部についての使用収益に関する合意の効力
土地区画整理法85条,土地区画整理法98条,土地区画整理法103条,土地区画整理法104条,民法601条
判旨
未登記の借地人が土地区画整理事業の施行者から仮換地の使用収益指定を受けなかった場合でも、所有者との間で仮換地上の特定部分を本換地後も賃貸借する旨の合意があれば、換地処分後の占有は適法となる。
問題の所在(論点)
土地区画整理事業における未登記借地権者が、施行者から仮換地の指定(使用収益部分の指定)を受けていない場合であっても、所有者との合意に基づき、換地処分後の土地について適法な占有権原を主張できるか。
規範
土地区画整理事業において、未登記の賃借人は施行者から仮換地の使用収益指定を受けない限り、当然には仮換地を現実に使用収益できない。しかし、従前地の所有者と賃借人との間で、仮換地上の特定部分の使用収益について合意し、かつ当該特定部分がそのまま本換地となった場合には換地処分後もそのまま賃貸する旨の合意が成立しているときは、換地処分終了後の当該特定部分について、賃借権に基づく適法な占有権原を有する。
重要事実
事件番号: 昭和37(オ)445 / 裁判年月日: 昭和41年4月22日 / 結論: 棄却
借地権者が従前土地上に登記ある建物を所有している場合でも、借地権の申告に基づいて施行者が仮換地上に使用収益部分の指定をしなければ、仮換地上に使用収益権は生じない。
従前地の所有者(又はその代理人D1)は、被上告人Bに対し、従前地の一部を建物所有目的で期限の定めなく賃貸した。その後、土地区画整理事業により仮換地の指定がなされたが、Bは施行者に対し未登記借地権の届出をしなかった。一方で、D1とBは、仮換地の特定部分につき従前地と同様の使用収益をすることを承諾し、かつ当該特定部分がそのまま本換地になることを条件として換地処分後も賃貸する旨の合意をしていた。その後、当該特定部分は合意通りの位置関係で本換地(本件土地)となったが、上告人はBに対し占有権原がないとして明け渡しを求めた。
あてはめ
本件では、D1が所有者らの包括的な代理人として、Bとの間で仮換地の特定部分につき「換地処分終了後もそのまま賃貸する」旨の条件付賃貸借合意を締結している。実際に、当該特定部分はそのままの位置関係で本換地として確定しており、合意の停止条件が成就したといえる。このような当事者間の合意がある以上、行政上の手続である使用収益指定の有無にかかわらず、私法上の賃貸借契約に基づき、Bは本件土地を適法に使用収益する権利を取得したものと解される。また、共有者の一部が未成年であっても、管理一切を委ねられたD1が代理し、共同親権者である妻の同意も推認されるため、当該合意は有効である。
結論
被上告人Bは、所有者側との私法上の合意に基づき、本件土地につき賃借権に基づく正当な占有権原を有する。したがって、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
土地区画整理法上の仮換地指定に伴う公法上の制約と、当事者間の私法上の契約の効力を区別する射程を有する。未登記借地権者が対抗要件や施行者への届出を欠く場合であっても、所有者との直接の合意があれば、換地後の土地の占有権原を基礎付け得ることを示す実務上重要な判断である。
事件番号: 昭和45(オ)1003 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
否定(昭和三四年(オ)三二六号、同三六年三月七日第三小法廷判決・民集一五巻三号三六五頁参照)
事件番号: 昭和38(オ)559 / 裁判年月日: 昭和41年1月18日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部について賃借権を有する者は、土地区画整理の施行者から、特別都市計画法の下においては換地予定地について使用収益とすることのできる範囲の指定を、また、土地区画整理法の下においては仮換地について仮りに賃借権の目的となるべき宅地またはその部分の指定をうけなければ、土地所有者との関係においても、換地予定地または仮…
事件番号: 昭和44(オ)26 / 裁判年月日: 昭和44年4月22日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部の賃借人は、特段の事情のないかぎり、土地区画整理事業の施行者から、使用収益部分の指定を受けることによつて、はじめてその部分について、現実に使用収益をすることができる。
事件番号: 昭和34(オ)444 / 裁判年月日: 昭和36年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の競売において、他人の依頼を受けて名義人となり競落した場合であっても、内部関係において所有権を依頼者に移転する合意があれば、依頼者が実質的な所有権を取得する。その後、当該物件の譲受人が従前の賃貸借契約を承継することに合意した場合には、譲受人は賃借人に対して明渡請求をなし得ない。 第1 事案の…