従前の土地の一部について賃借権を有する者は、土地区画整理の施行者から、特別都市計画法の下においては換地予定地について使用収益とすることのできる範囲の指定を、また、土地区画整理法の下においては仮換地について仮りに賃借権の目的となるべき宅地またはその部分の指定をうけなければ、土地所有者との関係においても、換地予定地または仮換地を使用することはできない。
宅地の一部について賃借権を有する者の換地予定地または仮換地の上に有する使用収益権
特別都市計画法13条,特別都市計画法14条,土地区画整理法98条
判旨
土地区画整理事業において、従前の土地の一部に未登記の賃借権を有する者は、施行者から仮換地上の使用収益範囲(賃借権の目的となるべき部分)の指定を受けない限り、土地所有者との関係でも仮換地を使用収益する権限を有しない。また、仮換地指定前に借地権を譲り受けた者には、前借地権者に対する指定の効力は及ばない。
問題の所在(論点)
1. 土地区画整理事業における未登記借地権者が、仮換地(換地予定地)を使用収益するための要件。 2. 仮換地等の指定前に借地権を譲り受けた者に対し、譲渡人に対してなされた指定の効力が及ぶか。
規範
1. 土地区画整理法下において、従前の土地の一部について賃借権を有する者が、仮換地(又は換地予定地)を使用収益するためには、法98条(又は特別都市計画法13条・14条)に基づき、施行者から仮に賃借権の目的となるべき宅地又はその部分の指定を受ける必要がある。 2. 右指定がない限り、土地所有者との関係においても、当該土地を使用収益する権限を主張することはできない。 3. 仮換地(又は換地予定地)の指定より以前に借地権を譲り受けた者に対しては、譲渡人(前借地権者)に対してなされた指定の効力は及ばない。
重要事実
東京都知事が施行する土地区画整理事業の施行地区内において、訴外Dは被上告人(所有者)から土地の一部(旧地B)を借地していた。上告人らは、施行者によるDへの換地予定地の指定がなされるより前に、Dから借地権を分割して譲り受けた。その後、施行者は、Dを借地権者として本件換地予定地の指定を行ったが、上告人らに対しては個別の指定を行わなかった。上告人らは、本件換地予定地を占有する権限があるとして、被上告人からの明渡請求を争った。
あてはめ
1. 上告人らは、従前の土地の一部の賃借権を譲り受けたと主張するが、施行者(東京都知事)から、仮換地について特別都市計画法13条・14条や土地区画整理法98条に基づく使用収益範囲の指定を受けていない。したがって、適法な占有権限を欠く。 2. 上告人らが借地権を譲り受けたのは、Dに対して換地予定地の指定がなされる以前である。この場合、指定後に権利を承継した者(法129条参照)とは異なり、Dに対する指定の効力が上告人らに当然に及ぶことはない。
結論
上告人らは、施行者から自己を対象とする使用収益範囲の指定を受けていない以上、土地所有者に対し本件土地の占有権限を対抗できず、土地の明渡しを拒めない。
実務上の射程
仮換地指定により従前の土地の使用収益が停止される(法99条)一方で、仮換地を使用するには「指定」という行政処分が必要であるという枠組みを示す。特に借地権が分割譲渡された場合、譲受人は自ら申告(法85条)し、自己に対する指定を得なければ不法占有となり得る点に注意を要する。答案では「仮換地を使用できる権利の発生根拠」として本規範を用いる。
事件番号: 昭和37(オ)238 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 破棄差戻
従前の土地の一部を賃借する者は、土地区画整理法に定める権利申告の手続をして土地区画整理事業の施行者から仮に使用収益しうべき部分の指定をうけないかぎり、仮換地につき使用収益することができない。
事件番号: 昭和45(オ)1003 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
否定(昭和三四年(オ)三二六号、同三六年三月七日第三小法廷判決・民集一五巻三号三六五頁参照)
事件番号: 昭和37(オ)445 / 裁判年月日: 昭和41年4月22日 / 結論: 棄却
借地権者が従前土地上に登記ある建物を所有している場合でも、借地権の申告に基づいて施行者が仮換地上に使用収益部分の指定をしなければ、仮換地上に使用収益権は生じない。
事件番号: 昭和31(オ)623 / 裁判年月日: 昭和33年7月3日 / 結論: 破棄差戻
土地区画整理の施行にあたり、従前の宅地の一部について賃借権を有するにすぎない者は、仮換地について先ず施行者の指定がなされない限り、当然には仮換地上に権利を有するものではないと解するを相当とする。