土地区画整理の施行にあたり、従前の宅地の一部について賃借権を有するにすぎない者は、仮換地について先ず施行者の指定がなされない限り、当然には仮換地上に権利を有するものではないと解するを相当とする。
宅地の一部について賃借権を有する者の区画整理による仮換地上に有する権利。
特別都市計画法施行令45条但書,土地区画整理法98条
判旨
従前の宅地の一部について賃借権を有する者は、土地区画整理法施行後の仮換地指定において、施行者によりその権利の目的となるべき宅地又はその部分の指定がなされない限り、当然には仮換地について借地権を取得することはない。
問題の所在(論点)
土地区画整理事業における仮換地の指定に際し、従前の宅地の一部にのみ賃借権を有する者は、施行者による個別の権利指定がない場合であっても、当然に仮換地上の特定の範囲について借地権を主張できるか。
規範
土地区画整理法98条(旧法及び特別都市計画法含む)によれば、施行者が仮換地を指定する際、従前の宅地に賃借権等の使用収益権を有する者があるときは、その仮換地について、仮にその権利の目的となるべき宅地又はその部分を指定しなければならない。また、同法85条により、権利者は施行者に対し権利の申告をなし得る。したがって、従前の宅地の一部についてのみ賃借権を有する場合には、施行者による仮換地上の権利範囲の指定がない限り、当然に仮換地について権利を有するものではない。
重要事実
被上告人(賃借人)は、従前の宅地約25坪のうちの一部に建物敷地としての賃借権を有し、これに対抗力を備えていた。土地区画整理事業に伴い、被上告人は旧借地と重なり合う部分がある仮換地予定地上に建物を移動し、現在約17坪を占拠している。原審は、占拠場所が旧借地と格別の異動がなく、面積も縮小しており不当な利益を得るものではないとして、施行者の指定の有無にかかわらず、被上告人が当然に当該仮換地上の占拠部分について借地権を有すると判断した。これに対し、上告人が仮換地上の権利関係の発生要件をめぐり上告した。
事件番号: 昭和33(オ)1063 / 裁判年月日: 昭和36年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理において、従前の宅地の一部に賃借権を有する者は、施行者による仮換地の指定を受けない限り、当然には仮換地を使用する権限を有しない。仮換地指定が従前の賃借地を含んでなされた場合であっても、土地区画整理法99条3項に基づき、賃借人はその効果として使用権限を取得することはない。 第1 事案の概…
あてはめ
土地区画整理法98条は、従前の宅地の権利者に対し、仮換地においてその権利の対象となるべき範囲を施行者が「指定しなければならない」と規定している。本件のように、従前の宅地の一部についてのみ賃借権を有するに過ぎない場合、仮換地のどの部分が賃借権の対象となるかは施行者の指定行為によって具体化されるべき事項である。被上告人は法85条に基づき権利の申告を行うことで指定を受ける機会が保障されている。それにもかかわらず、施行者による具体的な指定が行われていない段階で、占拠の事実や旧借地との場所的近接性のみをもって当然に借地権の成立を認めることは、法の定める換地処分の仕組みに反する。
結論
施行者の指定がない限り、従前の宅地の一部についての賃借権者は、当然には仮換地について権利を有するものではない。原審の判断には法令解釈の誤りがあり、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
土地区画整理事業における仮換地使用権の発生時期と範囲に関する重要判例。従前の宅地の一部賃借人は、仮換地指定において施行者による「権利の目的となるべき部分の指定」を受けることが、仮換地を使用する権利を取得するための要件となる。答案上は、仮換地指定の法的性質が「形成的な行政処分」であることを踏まえ、私法上の権利関係もこの処分を待って確定するという構成に親しむ。
事件番号: 昭和38(オ)559 / 裁判年月日: 昭和41年1月18日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部について賃借権を有する者は、土地区画整理の施行者から、特別都市計画法の下においては換地予定地について使用収益とすることのできる範囲の指定を、また、土地区画整理法の下においては仮換地について仮りに賃借権の目的となるべき宅地またはその部分の指定をうけなければ、土地所有者との関係においても、換地予定地または仮…
事件番号: 昭和44(オ)26 / 裁判年月日: 昭和44年4月22日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部の賃借人は、特段の事情のないかぎり、土地区画整理事業の施行者から、使用収益部分の指定を受けることによつて、はじめてその部分について、現実に使用収益をすることができる。
事件番号: 昭和37(オ)238 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 破棄差戻
従前の土地の一部を賃借する者は、土地区画整理法に定める権利申告の手続をして土地区画整理事業の施行者から仮に使用収益しうべき部分の指定をうけないかぎり、仮換地につき使用収益することができない。