判旨
土地区画整理において、従前の宅地の一部に賃借権を有する者は、施行者による仮換地の指定を受けない限り、当然には仮換地を使用する権限を有しない。仮換地指定が従前の賃借地を含んでなされた場合であっても、土地区画整理法99条3項に基づき、賃借人はその効果として使用権限を取得することはない。
問題の所在(論点)
土地区画整理法に基づく仮換地指定がなされた場合において、従前の宅地の一部の賃借人は、施行者から個別に仮換地の指定を受けない限り、当該仮換地を使用する権限を有するか。法99条3項の解釈と、仮換地指定処分の効力が賃借権に及ぶ範囲が問題となる。
規範
土地区画整理の施行にあたり、従前の宅地の一部について賃借権を有する者は、施行者によって仮換地の指定(権利の目的となるべき土地の指定)がなされない限り、当然には仮換地に対して権利を行使し得る地位に立たない。また、仮換地の指定処分の効果として、当然に賃借人が使用権限を取得すると解することはできず、法99条3項の規定に基づき、指定がない以上は使用権限を有しないものと解すべきである。
重要事実
上告人は、土地区画整理事業の施行区域内にある従前の宅地の一部について賃借権を有していた。その後、当該土地を含む範囲について仮換地指定がなされたが、施行者は賃借人である上告人に対して仮換地の指定(法98条に基づく権利の目的となるべき土地の指定)を行わなかった。上告人は、仮換地指定がなされた以上、当然にその占有部分を使用する権限があると主張して争った。
あてはめ
土地区画整理法上、仮換地指定は所有者だけでなく各権利者に対してもなされるべきものであるが、賃借人が施行者に対し権利の申告をなさない等の事情により指定がなされない場合がある。本件では、上告人(賃借人)に対して仮換地の指定がなされていない以上、仮換地が従前の賃借地を物理的に含んで指定されたとしても、法99条3項の反対解釈および同条の趣旨に照らし、上告人が仮換地指定処分の効果として当然に使用権限を取得することはない。したがって、所有者が賃借権に妨げられず仮換地を使用できる状態であっても、それは賃借人の申告不備等に起因する結果であり、不当とはいえない。
結論
上告人は仮換地上の占有部分を使用する権限を有しない。したがって、上告人の請求を排斥した原審の判断は正当である。
事件番号: 昭和45(オ)1003 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
否定(昭和三四年(オ)三二六号、同三六年三月七日第三小法廷判決・民集一五巻三号三六五頁参照)
実務上の射程
仮換地指定に伴う使用収益権の移転は、権利者ごとに個別的に判断されるべきであることを示した。答案上は、法99条の効力を論じる際、所有権以外の権利(賃借権等)については、施行者による具体的な指定の有無が権利行使の前提条件となることを指摘する際に活用できる。権利者が申告を怠った場合の不利益帰属の根拠としても有用である。
事件番号: 昭和31(オ)623 / 裁判年月日: 昭和33年7月3日 / 結論: 破棄差戻
土地区画整理の施行にあたり、従前の宅地の一部について賃借権を有するにすぎない者は、仮換地について先ず施行者の指定がなされない限り、当然には仮換地上に権利を有するものではないと解するを相当とする。
事件番号: 昭和44(オ)26 / 裁判年月日: 昭和44年4月22日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部の賃借人は、特段の事情のないかぎり、土地区画整理事業の施行者から、使用収益部分の指定を受けることによつて、はじめてその部分について、現実に使用収益をすることができる。
事件番号: 昭和38(オ)559 / 裁判年月日: 昭和41年1月18日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部について賃借権を有する者は、土地区画整理の施行者から、特別都市計画法の下においては換地予定地について使用収益とすることのできる範囲の指定を、また、土地区画整理法の下においては仮換地について仮りに賃借権の目的となるべき宅地またはその部分の指定をうけなければ、土地所有者との関係においても、換地予定地または仮…