従前の土地の一部の賃借人は、特段の事情のないかぎり、土地区画整理事業の施行者から、使用収益部分の指定を受けることによつて、はじめてその部分について、現実に使用収益をすることができる。
従前の土地の一部の賃借人と仮換地の使用収益権
土地区画整理法99条
判旨
従前の土地の一部を賃借する者は、土地区画整理事業の施行者から使用収益部分の指定を受けない限り、特段の事情がない限り、仮換地を現実に使用収益することはできない。
問題の所在(論点)
土地区画整理事業において、従前の土地の一部を目的とする借地権を有する者が、施行者から仮換地上の使用収益部分の指定を受けていない場合に、当該仮換地を使用収益する権限を有するか。
規範
従前の土地の一部について賃借権を有する者は、土地区画整理事業の施行者から使用収益すべき部分の指定を受けることによって初めて当該部分を現実に使用収益できる。したがって、特段の事情のない限り、当該指定を受けない段階においては、仮換地について当然に使用収益権を行使することはできない。
重要事実
被上告人(土地所有者)は、合計152坪余の土地を所有しており、そのうちの一筆の北東側50坪を建物所有目的で上告人に賃貸していた。その後、当該土地を含む一帯で特別都市計画法に基づく区画整理が施行され、被上告人の所有地に対して仮換地(本件土地等)が指定された。しかし、上告人が施行者に対して借地権の届出を行わなかったため、仮換地上における借地部分の指定がなされないままの状態となっていた。
事件番号: 昭和37(オ)445 / 裁判年月日: 昭和41年4月22日 / 結論: 棄却
借地権者が従前土地上に登記ある建物を所有している場合でも、借地権の申告に基づいて施行者が仮換地上に使用収益部分の指定をしなければ、仮換地上に使用収益権は生じない。
あてはめ
本件において、上告人は従前の土地の一部(50坪)の賃借人にすぎない。土地区画整理の過程で、施行者から換地予定地(仮換地)の指定はなされたものの、上告人が借地権の届出を怠ったために、当該仮換地内における具体的な借地部分の指定は行われていない。本件において指定を不要とするような「特段の事情」も認められず、借地の範囲を維持する旨の合意等の事実も否定されている。そうである以上、上告人は本件仮換地について、いまだ現実に使用収益し得る段階に達していないと評価される。
結論
上告人は、施行者から使用収益部分の指定を受けていない以上、本件仮換地について当然には使用収益権を有しない。
実務上の射程
仮換地指定による使用収益権の移転(土地区画整理法100条等)において、分節的な利用関係(一部賃貸借)がある場合の権利行使の限界を示したものである。答案上は、仮換地指定の効力が生じても、一部賃借人の場合は「使用収益すべき部分の指定」が対抗要件や権利行使の前提条件として機能する点に留意して論じる必要がある。
事件番号: 昭和33(オ)1063 / 裁判年月日: 昭和36年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理において、従前の宅地の一部に賃借権を有する者は、施行者による仮換地の指定を受けない限り、当然には仮換地を使用する権限を有しない。仮換地指定が従前の賃借地を含んでなされた場合であっても、土地区画整理法99条3項に基づき、賃借人はその効果として使用権限を取得することはない。 第1 事案の概…
事件番号: 昭和45(オ)1003 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
否定(昭和三四年(オ)三二六号、同三六年三月七日第三小法廷判決・民集一五巻三号三六五頁参照)
事件番号: 昭和38(オ)559 / 裁判年月日: 昭和41年1月18日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部について賃借権を有する者は、土地区画整理の施行者から、特別都市計画法の下においては換地予定地について使用収益とすることのできる範囲の指定を、また、土地区画整理法の下においては仮換地について仮りに賃借権の目的となるべき宅地またはその部分の指定をうけなければ、土地所有者との関係においても、換地予定地または仮…
事件番号: 昭和34(オ)842 / 裁判年月日: 昭和40年3月10日 / 結論: 破棄差戻
従前の土地の一部を賃借する者は、土地区画整理法第八五条の定める権利申告の手続をして土地区画整理事業の施行者からかりに使用収益しうべき部分の指定を受けないかぎり、仮換地につき現実に使用収益をすることができない。