一筆の従前地全部が賃貸借の目的となつている場合において、当該賃借人が特別都市計画法施行令第四五条但書所定の期間内に賃借権の届出をしたにもかかわらず、土地区画整理施行者が、特別都市計画法第一三条第二項による通知または土地区画整理法第九八条による指定をする必要がないものとして、これをしなかつた等原判示のような事情(原判決理由参照)があるとしても、その通知または指定がないかぎり、右賃借人は換地予定地または仮換地?ついて使用収益の権能を有しない。
一筆の従前地全部を賃借する者が適法な賃借権の届出をした場合であつても換地予定地または仮換地について使用収益の権能を有しないとされた事例
特別都市計画法13条,土地区画整理法98条
判旨
土地区画整理事業において、従前の土地の賃借権者は、施行者から仮換地につき「仮に賃借権の目的となるべき宅地」の指定(使用収益部分の指定)を受けない限り、当該仮換地を現実に使用収益することはできない。この理は、賃借権が従前の土地の一部であるか全部であるかを問わず適用される。
問題の所在(論点)
土地区画整理事業における仮換地指定の際、従前の土地の賃借人が施行者から「仮に賃借権の目的となるべき宅地」の指定を受けていない場合、当該賃借人は仮換地について使用収益権を主張できるか。また、一筆の土地全部の賃借人であることは、この結論に影響を及ぼすか。
規範
土地区画整理法(及び特別都市計画法)に基づく仮換地の指定制度において、従前の土地に賃借権を有する者は、施行者から仮換地について使用収益すべき部分の指定(仮に賃借権の目的となるべき宅地の指定)を受けることによって、はじめて当該部分を現実に使用収益する法的権限を取得する。したがって、当該指定がない段階では、たとえ従前の土地の全部について賃借権を有していたとしても、仮換地について使用収益権を主張することはできない。
重要事実
上告人が所有する土地につき、三重県知事を施行者とする土地区画整理事業が実施された。従前の土地の賃借人である被上告人は、施行者に対し賃借権の届出をしていたが、施行者は「一筆の土地全部の賃借人には個別の通知は不要」と判断し、被上告人に対し仮換地(本件予定地)について賃借権の目的となるべき宅地の指定通知を行わなかった。その後、被上告人は本件予定地につき使用収益権の確認と引渡しを求めて提訴した。
あてはめ
被上告人は従前の土地の賃借人であるが、本件仮換地について施行者から仮に賃借権の目的となるべき宅地の指定通知を受けていない。仮換地制度の趣旨からすれば、使用収益権の発生には施行者による具体的な指定が不可欠であり、これがない以上、被上告人は本件予定地を現実に使用収益する権利を有しない。原審が認定した「一筆の土地全部の賃借人であるため施行者が通知を省略した」という事情は、適法な指定を代替するものではなく、結論を左右する特段の事情には当たらない。
結論
被上告人は本件仮換地につき使用収益権を有しない。したがって、被上告人の使用収益権確認及び引渡し請求を認容した原判決は、土地区画整理法等の解釈を誤った違法がある。
実務上の射程
仮換地指定に伴う使用収益権の移転に関するリーディングケースである。答案上は、仮換地指定の効力が発生しても、権利の種類(所有権・借地権等)に応じた適切な指定・通知が欠けていれば、現実に使用収益する権限は発生しないという文脈で用いる。一筆の全部か一部かを問わず、手続的要件を厳格に解する姿勢を示すものである。
事件番号: 昭和34(オ)326 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部について賃借権を有する者はたとえその賃借部分が仮換地に含まれていても、賃借権について仮に権利の目的となるべき部分の指定を受けないかぎり、右賃借部分の使用権を有しない。
事件番号: 昭和44(オ)332 / 裁判年月日: 昭和44年7月24日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部に賃借権を有する者は、右賃借権について権利指定の届出をした場合であつても、区画整理事業の施行者から仮換地上の使用収益部分の指定を受けないかぎり、仮換地を現実に使用収益する権限を有しない。
事件番号: 昭和42(オ)744 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: その他
仮換地の指定後、従前の土地が分割譲渡されて所有者を異にする二筆以上の土地となつた場合においては、施行者により各筆に対する仮換地を特定した変更指定処分がされないかぎり、各所有者は、仮換地全体につき、従前の土地に対する各自の所有地積の割合に応じ使用収益権を共同して行使すべき、いわゆる準共有関係にあるものと解すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)325 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理に伴う仮換地の指定により、従前の土地が使用収益できなくなった場合であっても、土地区画整理施行者への申告等を通じて仮換地を使用収益し得る地位にある以上、賃借権存在の確認を求める訴えの利益が認められる。 第1 事案の概要:賃貸借契約の当事者間で、当該契約の存否が争われた事案である。対象土地…