一筆の土地全部を賃借した者でも、賃借土地の仮換地を現実に使用収益するためには、土地区画整理事業の施行者から土地区画整理法第九八条第一項所定の権利の目的となるべき土地としての指定通知を受けることを必要とする。
一筆の土地全部を賃借した者は賃借土地の仮換地を使用収益するためには土地区画整理事業の施行者からの指定通知を必要とするか。
土地区画整理法85条1項,土地区画整理法98条
判旨
土地区画整理における仮換地の指定があった場合、従前の土地の賃借人が仮換地を現実に使用収益するためには、一筆の土地全部の賃借人であるか一部の賃借人であるかを問わず、施行者による使用収益すべき部分の指定を必要とする。
問題の所在(論点)
土地区画整理法に基づき仮換地の指定がなされた場合、従前の土地について一筆全部の賃借権を有する賃借人は、施行者から別途「使用収益すべき部分の指定」を受けずとも、直ちに仮換地を現実に使用収益することができるか。
規範
土地区画整理法上の仮換地指定において、従前の土地につき賃借権を有する者は、施行者から使用収益すべき部分の指定を受けることによって初めて当該部分を現実に使用収益できる。いまだ指定を受けない段階では、仮換地を現実に使用収益する権能はない。この理は、賃借権が従前の一筆の土地全部に及ぶ場合であっても、その一部にすぎない場合であっても同様に妥当する。
重要事実
本件は、土地区画整理事業の施行に伴い仮換地指定がなされた事案である。被上告人(賃借人)は、従前の土地(一筆の土地)の全部または一部について賃借権を有していたが、仮換地の指定がなされた際、施行者から具体的な使用収益部分の指定を受けていなかった。また、戦時罹災土地物件令の適用による賃貸借期間の進行停止の有無や、仮換地の表示の更正等も争点となった。
あてはめ
仮換地制度において、賃借人が現実に使用収益を開始するためには、権利関係を明確にする施行者の公法上の処置(指定)が必要である。本件において、賃借人が従前一筆の土地全部を賃借していたとしても、仮換地における具体的な権利の範囲や位置を確定させるためには、施行者からの指定通知を欠くことはできない。したがって、指定がない以上、仮換地の使用収益を継続することは許されない。
結論
従前の土地全部を賃借していた場合であっても、賃借人が仮換地を現実に使用収益するためには、施行者からの指定通知が必要である。
実務上の射程
仮換地指定に伴う使用収益権の発生時期に関するリーディングケース。答案上は、賃借権者が仮換地を占有・使用する正当な権原を主張する際、単なる仮換地指定だけでなく、法99条等に基づく「使用収益を開始できる日」の指定や個別的な指定の有無を確認する根拠として用いる。
事件番号: 昭和44(オ)332 / 裁判年月日: 昭和44年7月24日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部に賃借権を有する者は、右賃借権について権利指定の届出をした場合であつても、区画整理事業の施行者から仮換地上の使用収益部分の指定を受けないかぎり、仮換地を現実に使用収益する権限を有しない。
事件番号: 昭和34(オ)326 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部について賃借権を有する者はたとえその賃借部分が仮換地に含まれていても、賃借権について仮に権利の目的となるべき部分の指定を受けないかぎり、右賃借部分の使用権を有しない。
事件番号: 昭和34(オ)325 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理に伴う仮換地の指定により、従前の土地が使用収益できなくなった場合であっても、土地区画整理施行者への申告等を通じて仮換地を使用収益し得る地位にある以上、賃借権存在の確認を求める訴えの利益が認められる。 第1 事案の概要:賃貸借契約の当事者間で、当該契約の存否が争われた事案である。対象土地…