一 地代家賃統制令の統制額の増額があつても、約定賃料がその額まで自動的に当然増額されるものではない。 二 賃借権確認の判決においては、その賃借権を特定しうるかぎり、常にその賃料額まで判決主文に明示しなければならないものではない。
一 地代家賃統制令に定める統制額の増額は約定賃料の当然増額をきたすか。 二 賃借権確認の判決において賃料額を主文に明示することの要否。
民法601条,地代家賃統制令5条,民訴法395条1項6号
判旨
賃貸借契約において地代家賃統制令により統制額が引き上げられたとしても、特段の事情がない限り賃料は自動的に増額されない。そのため、賃貸人が増額請求をしないまま統制額に基づく過大な賃料の支払を催告しても、その催告は無効であり、それに基づく契約解除は認められない。
問題の所在(論点)
地代家賃統制令による統制額の引き上げに伴い、何ら意思表示がなくとも賃料が自動的に増額されるか。また、約定賃料を超える統制額に基づきなされた催告の効力、およびそれに基づく解除の可否が問題となる。
規範
地代家賃統制令は地代家賃の最高限度を規制するものであり、統制額の改訂があったとしても、賃貸借契約における約定賃料が当然に統制額まで自動的に増額されるものではない。賃料債務不履行を理由とする契約解除には適法な催告を要するが、約定賃料を著しく超える額を請求する過大催告は、特段の事情がない限り、催告としての効力を有しない。
重要事実
上告人(賃貸人)と被上告人(賃借人)の間で、昭和23年度の約定地代を年坪5円とする土地賃貸借契約が締結されていた。その後、地代家賃統制令による統制額が引き上げられたが、上告人は被上告人に対し賃料増額の意思表示を行っていなかった。しかし、上告人は昭和24年から28年にかけて、約定地代(年坪5円)ではなく増額後の統制額に基づいた賃料の支払を求めて催告を行い、支払がないことを理由に賃貸借契約の解除を主張した。
あてはめ
本件では、昭和23年時点の約定地代は年坪5円であり、その後賃貸人から賃料増額の請求がなされた事実は認められない。統制令はあくまで価格の最高限を定めるにとどまるため、自動増額の特段の事情がない限り、約定賃料は年坪5円のまま維持される。したがって、上告人が行った統制額に基づく催告は、債務の本旨に合致しない過大な請求である。このような不適法な催告に基づいてなされた解除の意思表示は、有効な解除としての法的効果を生じ得ない。
結論
約定地代は自動的に増額されないため、上告人の催告は過大催告として無効である。よって、本件賃貸借契約の解除は認められない。
実務上の射程
賃料増額請求権(借地借家法11条等)の行使を欠いたまま、一方的に増額後の金額で催告を行うリスクを示す。実務上、催告額が真実の債務額を僅かに超える程度であれば催告は有効とされる場合もあるが、本判決のように増額の根拠(意思表示)を欠く場合には、催告そのものが無効とされ解除が否定されるという射程を持つ。
事件番号: 昭和33(オ)462 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料値上げの合意が地代家賃統制令に違反して無効である場合、当該合意に基づく不足分の不払を理由とする賃貸借契約の解除は認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)と賃借人(被上告人)との間で、本件建物の賃料値上げの合意がなされた。賃貸人は、賃借人が昭和25年9月分の賃料につき、値上げ後の不足分…