判旨
賃料額の合意が成立していない場合でも、当事者の意思を合理的に探究して客観的な適正賃料を基礎に契約の成立を認めるべきであり、また、賃貸人が過大な催告をし、適正額の提供があっても受領を拒絶することが明らかな場合には、賃借人が現実の提供をせずとも履行遅滞による解除は認められない。
問題の所在(論点)
賃料額の具体的合意がない場合の契約の効力、および、過大な催告がなされた状況下で債務者が適正額を提供しなかった場合に履行遅滞が成立するか。
規範
1.賃料額の合意がない場合、当事者の合理的な意思を探究し、法令等に準拠した適正額による合意があったものと解して契約の有効性を判断する。2.催告された賃料額が過大であり、かつ債務者が適正額を提供したとしても債権者がその受領を拒絶することが客観的に認められる場合には、債務者が現実の提供や言語上の提供をしなかったとしても、履行遅滞の責を免れる。
重要事実
賃貸借契約において「賃料は追って官公署の告示により適正なる金額を協定する」との条項があったが、事後的に具体的な金額の協定はなされなかった。その後、賃貸人は1坪5円という過大な賃料を催告したが、賃借人は支払わなかった。これに対し賃貸人は賃料不払を理由に解除を主張したが、事案の経緯から、仮に賃借人が客観的な適正額を提供したとしても賃貸人はその受領を拒否したであろうという事情が存在した。
あてはめ
契約条項の趣旨は、当事者が現実の協議を経て初めて確定させるという性質のものではなく、当時の地代家賃統制令等に準拠した客観的な適正賃料による意思であったと解されるため、契約は有効である。また、賃貸人が過大な催告をしており、かつ適正額を提供しても受領拒絶が確実視される状況においては、賃借人が提供を欠いたとしても遅滞にはならず、解除の意思表示は無効となる。
結論
賃料額の具体的合意がなくても契約は有効であり、受領拒絶が確実な状況下での過大催告に基づく解除は認められない。
実務上の射程
契約成立要件としての賃料合意の程度を緩和し、当事者の合理的意思解釈で補完する手法を示す。また、債権者の受領拒絶が明白な場合の債務者の弁済提供義務の免除(民法492条、493条但書関連)の法理を、過大催告による解除の可否という文脈で活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)118 / 裁判年月日: 昭和29年7月20日 / 結論: 棄却
借地法第九条の一時賃貸借については、買取請求権に関する同法第一〇条の適用はない。
事件番号: 昭和33(オ)462 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料値上げの合意が地代家賃統制令に違反して無効である場合、当該合意に基づく不足分の不払を理由とする賃貸借契約の解除は認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)と賃借人(被上告人)との間で、本件建物の賃料値上げの合意がなされた。賃貸人は、賃借人が昭和25年9月分の賃料につき、値上げ後の不足分…