借地法第九条の一時賃貸借については、買取請求権に関する同法第一〇条の適用はない。
借地法第九条の一時賃貸借と同法第一〇条の適用の有無
借地法9条,借地法10条
判旨
借地法9条(現借地借家法25条)の「一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合」には、同法10条(現14条)の建物買取請求権に関する規定は適用されない。
問題の所在(論点)
一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合(借地法9条)において、建物買取請求権(借地法10条)の規定が適用されるか。
規範
一時賃貸借は、借主個人の一時的目的や貸主の好意的配慮に基づき、特に強い個人間の信頼関係に重きを置いて設定されるものである。その本質は期間満了時の確実な返還にあり、借地権の譲渡性(融通性)は予定されていない。したがって、借地法の主眼である居住の安定や建物の保存という要請は妥当せず、貸主に建物買取という重大な経済的負担を課すべきではないため、建物買取請求権の規定は適用されないと解するのが相当である。
重要事実
本件において、借地権の設定が「一時使用のため」のものであるか否か、およびその場合に借主からの建物買取請求が認められるかが争われた(具体的な設定経緯や建物の詳細は判決文からは不明だが、判例は大審院以来の見解を維持する形で一時賃貸借の特殊性を説示している)。
あてはめ
一時賃貸借は、将来の自己使用までの合間を貸し出すような場合であり、期間満了後の順当な明渡しが極めて重要視される。借主が信頼できない第三者に借地権を譲渡しようとした際、貸主がこれを拒絶するために建物買取を強制されるとすれば、貸主にとって不当な負担となる。また、一時的な建物は保存の価値も通常乏しく、借主は本来自費で収去すべき義務を負う。このような性質に鑑みれば、法10条を適用して貸主に建物を買い取らせることは、一時賃貸借の本質的差異を無視するものであり、妥当ではない。
結論
一時使用のための借地権設定(借地法9条)については、建物買取請求権(借地法10条)の適用はない。
実務上の射程
現行の借地借家法25条(一時使用目的の借地権)においても、同法13条(建物買取請求権)の適用を排除する根拠として本判例の論理がそのまま活用できる。事案のあてはめでは、賃貸借の目的、期間、建物の構造、権利設定の経緯等の事実から「一時使用」の該当性を認定した上で、本判例を引用して買取請求権を否定する流れとなる。
事件番号: 昭和38(オ)840 / 裁判年月日: 昭和39年4月24日 / 結論: 棄却
一時使用のため借地権が設定されている場合においては、借地権者は借地法第一〇条に定める建物買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和26(オ)658 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 破棄差戻
賃借権が債権であるというだけの理由で、賃借権に基く妨害排除の請求を排斥するのは違法である。
事件番号: 昭和29(オ)346 / 裁判年月日: 昭和30年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条(現・借地借家法25条)の「一時使用」にあたるかは、賃貸借の目的、期間、地上建物の種類・構造、賃料の多寡等から客観的に判断される。本判決は、原審の認定した事実関係に基づき、本件土地の賃貸借が一時使用のためのものであると認めることが可能であると判示し、上告を棄却した。 第1 事案の概要:本…