賃貸人が賃貸借の存続を否定する等、その後の賃料を受領しない意思が明確と認められるときは、賃借人は爾後の賃料につき言語上の提供をしなくても債務不履行の責を負わないものと解すべきである。
賃貸人が賃料の弁済を受領しない意思が明確な場合と賃料の弁済提供の要否。
民法493条
判旨
債権者が契約の存在を否定するなど弁済を受領しない意思が明確である場合には、債務者は口頭の提供(言語上の提供)をしなくても、履行遅滞の責任を負わない。
問題の所在(論点)
債権者(賃貸人)があらかじめ受領を拒絶する意思を明確にしている場合、債務者(賃借人)は口頭の提供(言語上の提供)を省略して履行遅滞の責任を免れることができるか。民法493条但書の解釈が問題となる。
規範
債権者が契約そのものの存在を否定するなど弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、債務者は民法493条但書の口頭の提供(言語上の提供)すら必要とせず、提供をしないことにつき債務不履行(履行遅滞)の責任を負わない。
重要事実
賃借人(被上告人)は、家屋の賃貸借期間が法定更新された後、更新直後の賃料(昭和29年6月分)を現実に提供したが、賃貸人(上告人)は更新を認めず受領を拒絶した。その後、賃借人が翌年4月分以降の賃料の支払をせず、言語上の提供も行わなかったため、賃貸人は賃料不払を理由に賃貸借契約の解除を主張した。
あてはめ
賃貸人は、賃貸借期間の満了を理由に契約の存続を否定しており、今後の賃料債務の弁済を受領しない意思が明確であったと認められる。このような状況下では、賃借人が賃料の支払や言語上の提供を行わなかったとしても、それは債権者の態度に起因するものであり、賃借人の責に帰すべき履行遅滞には当たらないと評価される。
結論
被上告人(賃借人)に履行遅滞の責任はなく、賃料不払を理由とする本件賃貸借契約の解除は無効である。
実務上の射程
受領拒絶が明確な場合の提供不要の法理(口頭の提供すら不要とされる例外ケース)を示す。答案では、相手方が契約の有効性を争うなどして受領しないことが確実な場合に、493条但書をさらに踏み込んで免除する際の根拠として活用する。
事件番号: 昭和33(オ)462 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料値上げの合意が地代家賃統制令に違反して無効である場合、当該合意に基づく不足分の不払を理由とする賃貸借契約の解除は認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)と賃借人(被上告人)との間で、本件建物の賃料値上げの合意がなされた。賃貸人は、賃借人が昭和25年9月分の賃料につき、値上げ後の不足分…