判旨
賃貸借契約において目的物の引渡しが完了している事実は、賃貸人の明渡請求等の主張や証拠によって適切に認定されるべきであり、上告審で初めて主張される解除の事実は考慮されない。
問題の所在(論点)
事実審で主張されなかった賃貸借の解除による消滅という事実を上告審で主張できるか。また、賃貸借の目的物の引渡しが完了したとの事実認定に違法があるか。
規範
民法上の賃貸借契約に基づく請求等において、目的物の引渡しが完了したか否かは、当事者の主張及び証拠に基づき事実認定の問題として判断される。また、事実審において主張されなかった新たな事実(賃貸借の解除による消滅等)を上告審で主張することは認められない。
重要事実
被上告人(賃貸人)が上告人(賃借人)に対し、本件賃貸借の目的部分の明渡しを求めて提訴した。原審(事実審)は証拠に基づき、賃貸借の目的部分が既に賃借人に引き渡された事実を認定した。これに対し上告人は、上告審において初めて本件賃貸借が解除により消滅したと主張し、また目的物の引渡しの事実を争った。
あてはめ
まず、賃貸借の解除については、上告人が原審において主張していなかった事実である。したがって、上告審においてこれを前提とする主張を行うことは採用し得ない。次に、目的物の引渡しの事実については、被上告人が第一審において明渡しを求めていることから、引渡しの完了を前提とする主張が含まれていると認められ、原審も証拠によって適法にこの事実を認定している。
結論
本件上告は棄却される。原審の事実認定に違法はなく、また上告審で新たに主張された解除の事実は採用されない。
実務上の射程
民事訴訟における「主張・立証の適時提出」の重要性及び、上告審が原則として法律審であり新証拠・新事実の主張を認めない点(民訴法上の原則)を確認する事案である。実務上、解除などの法的効果を狙う事由は必ず事実審の口頭弁論終結時までに主張しておく必要がある。
事件番号: 昭和33(オ)345 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原審で主張していなかった新たな事実上の主張を基礎として原判決の違法をいうことは、民事訴訟の手続上許されない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)からなされた月額5,000円の延滞賃料の催告に基づく契約解除を争っていた。上告人は、上告審において、当該催告より以前…