判旨
賃貸借契約の合意解除の成否について、事実審裁判所が証拠の取捨選択に基づきこれを否定した判断は、その裁量の範囲内として是認される。
問題の所在(論点)
賃貸借契約の合意解除という主要事実の存否について、事実審が行った証拠評価および事実認定の妥当性、ならびに相手方による自白の有無が問題となった。
規範
事実認定における証拠の取捨および判断は、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。当事者が主張する合意解除のような法的事実の存否については、証拠関係に照らして客観的に判断されるべきであり、上告審は事実審の判断に裁量権の逸脱がない限りこれを維持する。
重要事実
上告人(賃貸人側)が、賃貸借契約終了の唯一の原因として合意解除の成立を主張し、被上告人(賃借人側)に対して建物の明け渡し等を求めて提訴した事案。原審は、上告人が提示した証拠は採用できず、他に合意の成立を認めるに足りる証拠もないとして、合意解除を前提とする請求を棄却した。上告人は、被上告人が事実上合意を認めている等の主張をして上告した。
あてはめ
原判決において、上告人が主張する合意解除を裏付ける証拠は採用できないと判断されており、記録上、被上告人が合意解約の成立を自白した事実や、賃貸借関係が既に終了した事実を認めた形跡も見当たらない。したがって、証拠の取捨判断という事実審の裁量を非難する上告人の主張には理由がなく、原審の判断は証拠関係に照らして是認できる。
結論
合意解除の成立を否定した事実に合理性がある以上、賃貸借終了を前提とする本訴請求は失当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
契約の終了原因として合意解除を主張する場合、立証責任は解除を主張する側にあること、および事実審による証拠評価が極めて強い裁量を持つことを示す。実務上は、単なる終了の合意だけでなく、その成立を裏付ける客観的証拠や自白の存在を慎重に検討すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)1064 / 裁判年月日: 昭和35年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原判決が適法に行った事実認定と相容れない事実を主張することや、原審で主張していなかった新たな事実を主張して原判決を非難することは、適法な上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が証拠に基づいて適法に行った事実認定に対し、これと相容れない独自の事実を主張して認…