判旨
選挙において、候補者の氏名を仮名で記載した投票について、誤記や濁点の有無等の差異があっても、客観的に候補者の氏名を表示しようとしたものと認められる場合には、当該投票は有効とされる。
問題の所在(論点)
公職選挙法(当時の規定)に基づく投票において、候補者名の記載に濁点の付加や仮名表記の差異がある場合、当該投票は無効となるか、それとも有効と認められるか。特に、誤記に近い記載から候補者の特定が可能かが問題となる。
規範
自書式投票制度において、投票の有効性は、記載された文字や符号から客観的に特定の候補者を指し示す意思が認められるか否かによって判断される。具体的には、誤記や仮名遣いの相違があったとしても、それが当該候補者の氏名を表示しようとしたものと社会通念上認められ、かつ、他人の氏名等と混同するおそれがない限り、当該投票は有効と解すべきである。
重要事実
選挙における投票の効力が争われた事案。ある候補者(判決文からは氏名の詳細は直接不明だが、文脈から「はだ(羽田等)」という氏名の候補者が想定される)に対し、「はだ」と平仮名で記載された投票、および「バダ」と片仮名(濁点付き)で記載された投票がなされた。上告人は、これらの記載は無効であると主張して争った。
あてはめ
本件における「はだ」との記載は、候補者の氏名をそのまま平仮名で表記したものであり、候補者の特定に何ら支障はない。また、「バダ」との記載についても、清音と濁音の取り違え(「はだ」を「ばだ」と記載)にすぎず、発音や表記の類似性から客観的に当該候補者を指していることは明らかである。これらは特定の候補者を自筆で表示しようとする選挙人の真意を推認させるに十分であり、他候補者との混同が生じる特段の事情も認められない。
結論
「はだ」および「バダ」と記載された投票は、いずれも有効である。したがって、これらを無効と主張する上告人の請求は棄却される。
事件番号: 昭和37(オ)1083 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: その他
候補者中に鳥山DとE酉之助がある場合に、「トリ」と記載された投票に公職選挙法第六八条の二を適用し、両者の得票に按分加算することはできない。
実務上の射程
自書式投票における「誤記」の許容範囲を示す事例である。答案作成においては、多少の誤字・脱字や仮名遣いの誤りがあっても、それが特定の候補者を指すものと客観的に認識できるのであれば、選挙人の真意を尊重して有効と解すべきという規範の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1105 / 裁判年月日: 昭和29年12月23日 / 結論: 棄却
「マルキン」が候補者の通称である場合は「(記載内容は末尾添付)」、「○キン」、「○金」、「(記載内容は末尾添付)ン」「(記載内容は末尾添付)」と記載されている投票は、いずれも右候補者に対する有効投票と解すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年10月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票用紙に候補者の氏名のほか「江」という敬称を付す記載は、公職選挙法68条5号の他事記載に該当し無効である。一方で、氏名の誤記や他候補者の氏名との混同がある場合でも、他候補者の氏名等と比較して特定の候補者に対する投票意思が認められれば有効となる。 第1 事案の概要:村長選挙の効力に関する訴訟におい…
事件番号: 昭和49(行ツ)53 / 裁判年月日: 昭和49年12月23日 / 結論: 破棄自判
候補者中に藤本俊夫と藤本利雄とがある場合に、右両者は、互いに混同を避けるため、選挙運動において、前者は「藤本とし夫」と記載するよう、後者は「ふじもと利お」と記載するよう、それぞれその氏名の表示方法を選挙人に鋭意宣伝し、その効果は投票結果にも相当にあらわれていたなど判示のような事情があるときは、「藤本よし夫」と記載された…