候補者中に鳥山DとE酉之助がある場合に、「トリ」と記載された投票に公職選挙法第六八条の二を適用し、両者の得票に按分加算することはできない。
公職選挙法第六八条の二の適用がないとされた事例
公職選挙法68条の2
判旨
公職選挙法68条の2による按分票の規定は、投票の効力判断に関する例外的規定であるため、候補者の氏または名の全部、あるいは完全に通用する通称の記載がない場合には、その適用は認められない。
問題の所在(論点)
氏名の一部または氏名の一部を想起させる名称のみが記載された投票について、公職選挙法68条の2(同一氏名等の候補者等に対する投票の効力)を適用して按分票として有効に扱うことができるか。
規範
公職選挙法68条の2は、本来は誰を記載したか確認し難い投票として無効とすべきものを、立法政策上、選挙人の意思を推定して有効とする例外的規定である。そのため、同条の適用範囲を拡大することには慎重であるべきであり、氏または名の全部、あるいは氏名に代わる通称が完全に記載されていない場合には、同条を適用して按分することは許されない。
重要事実
村議会議員選挙において「トリ」と記載された投票が1票あった。候補者には「鳥山D」と「E酉之助」の2名がおり、原審は、当該投票を両名の氏または名の一部を記載したものとして、同法68条の2に基づき按分加算すべきとした。
事件番号: 昭和28(オ)1105 / 裁判年月日: 昭和29年12月23日 / 結論: 棄却
「マルキン」が候補者の通称である場合は「(記載内容は末尾添付)」、「○キン」、「○金」、「(記載内容は末尾添付)ン」「(記載内容は末尾添付)」と記載されている投票は、いずれも右候補者に対する有効投票と解すべきである。
あてはめ
本件の「トリ」という記載は、両候補者の通称として一般に知れ渡っているものとは認められない。また、鳥山の氏の一部または酉之助の名の一部とは認められるものの、氏・名の全部や完全な通称の記載ではない。このような不完全な記載では、両名のいずれかに投票する意思があったかどうかも明白ではなく、按分規定を適用することは選挙人の真意に反するおそれがある。
結論
「トリ」と記載された投票に公職選挙法68条の2を適用することはできず、当該投票は無効である。
実務上の射程
記号的・断片的な記載について、安易に按分規定を適用して救済することを否定した判例である。答案上は、記載の不完全な投票の効力が争点となる際、同条の「例外的性格」を理由として、厳格に適用範囲を画定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)517 / 裁判年月日: 昭和35年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙において、候補者の氏名を仮名で記載した投票について、誤記や濁点の有無等の差異があっても、客観的に候補者の氏名を表示しようとしたものと認められる場合には、当該投票は有効とされる。 第1 事案の概要:選挙における投票の効力が争われた事案。ある候補者(判決文からは氏名の詳細は直接不明だが、文脈から「…
事件番号: 昭和49(行ツ)53 / 裁判年月日: 昭和49年12月23日 / 結論: 破棄自判
候補者中に藤本俊夫と藤本利雄とがある場合に、右両者は、互いに混同を避けるため、選挙運動において、前者は「藤本とし夫」と記載するよう、後者は「ふじもと利お」と記載するよう、それぞれその氏名の表示方法を選挙人に鋭意宣伝し、その効果は投票結果にも相当にあらわれていたなど判示のような事情があるときは、「藤本よし夫」と記載された…
事件番号: 昭和31(オ)687 / 裁判年月日: 昭和31年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙会における決定の効力は、開票の際に存在した事実上の投票状況を基礎として判断されるべきであり、事実認定に疑義がある場合には、証拠により確定された事実に従う。 第1 事案の概要:本件では、選挙会における決定の効力が争われた。具体的には、係争の投票4票が開票の際に存在したか否かが争点となり、上告人は…
事件番号: 昭和45(行ツ)52 / 裁判年月日: 昭和45年10月23日 / 結論: 破棄差戻
候補者中にD英実とE英七とがある場合に、D英七と記載された投票は、D英実に対する有効投票と認めるべきである。