一 第一審及び原審における訴訟代理権の欠缺をいう所論は、訴訟委任の手続がすべて適式に行われていることが記録上認められ、右欠缺を疑うべき点が見当らないから採用できない。 二 賃料債務不履行による賃貸借解除をするには、転借人に対する催告を要しない。
一 第一審及び原審における訴訟代理権の欠缺の主張に対する判断 二 賃料債務不履行による賃貸借解除をするには、転借人に対する催告を要するか
民訴法395条1項4号,民法541条,民法612条
判旨
賃貸人が賃料不払を理由に賃借人との契約を解除する場合、適法な転借人であっても通知や催告を要せず、契約消滅後は賃貸人に対して占有権原を主張できない。
問題の所在(論点)
賃貸人が賃料不払を理由に賃貸借契約を解除する際、適法な転借人に対しても催告や通知を行う必要があるか。また、賃貸借の終了に伴い、転借人は賃貸人からの明渡請求を拒否できるか。
規範
賃貸人と転借人との間には直接の契約関係が存在しないため、賃貸人が賃借人の賃料不履行を理由に契約を解除する場合、転借人に対して債務の履行を催告したり解除の通知をしたりする必要はない。また、賃貸借契約が解除により消滅した場合、転借人の占有権原も消滅し、賃貸人からの明渡請求を拒むことはできない。
重要事実
上告人(転借人)は、被上告人(賃貸人)の承諾を得て本件家屋を転借したと主張している。賃貸人は賃借人の賃料債務不履行を理由に賃貸借契約を解除し、転借人に対して家屋の明渡しを求めた。これに対し転借人は、自身への通知や催告がないこと、信頼関係が破綻していないこと、および信義則違反・権利濫用等を理由に解除の効力を争った。
あてはめ
賃貸人と転借人は直接の契約関係にないため、賃貸人は賃借人に対して催告を行えば足りる。転借人が承諾を得た適法な転借人であったとしても、この結論は左右されない。また、賃料不履行による解除において裁判所が信頼関係の破綻に必ずしも言及する必要はない。主たる賃貸借契約が適法に消滅した以上、転借人の占有は無権限となるため、明渡請求を拒むことは信義則等に照らしても認められない。
結論
賃貸人は転借人への催告なしに契約を解除でき、賃借人との契約が消滅すれば、転借人は賃貸人に対し建物の占有を主張できないため、明渡請求は認められる。
実務上の射程
賃貸借の付随的消滅の場面(民法613条関連)で、転借人の地位がいかに不安定かを端的に示す判例である。答案上は、合意解除の場合に転借人が保護される(対抗できる)法理との対比で、債務不履行解除の場合には転借人の承諾や通知が不要であることを論証する際に活用する。
事件番号: 昭和35(オ)1251 / 裁判年月日: 昭和38年9月26日 / 結論: 棄却
賃貸借の目的たる家屋の所有権を取得して賃貸人となつた者は、旧所有者と賃借人との間に存した転貸許容の特約をも承継する。