賃借家屋につき適法に転貸借がなされた場合であつても、賃貸人が賃借人の賃料延滞を理由として賃貸借を解除するときは、転借人に対し右延滞賃料の支払の機会を与えなければならないものではない。
賃借家屋につき適法な転貸借がなされた場合、賃貸人が賃料不払を理由に賃貸借を解除するときと、転借人に対する催告の要否
民法613条,借家法4条
判旨
適法な転貸借が成立している場合であっても、賃貸人が賃借人の賃料不払を理由に契約を解除する際には、転借人に対して催告や支払の機会を与える必要はない。
問題の所在(論点)
適法な転貸借が存在する場合、賃貸人が賃借人の賃料延滞を理由として契約を解除するためには、賃借人だけでなく転借人に対しても催告を行い、代位弁済等の機会を与えなければならないか。
規範
賃貸借契約における債務不履行解除(民法541条)において、賃貸人は賃借人に対して催告をすれば足り、転借人に対して催告等を行う義務を負わない。転貸借は賃貸借を基礎とするものである以上、賃貸借が賃料延滞により消滅する場合、転借人はその地位を賃貸人に対抗できない。
重要事実
賃借人が家屋を適法に転貸していた事案において、賃借人が賃料の支払を怠ったため、賃貸人は賃借人に対してのみ催告を行い、賃料不払を理由に賃貸借契約を解除した。これに対し、転借人は賃貸人から自分に対しても延滞賃料の支払機会を与えるべきであったと主張して争った。
あてはめ
賃貸借関係において、賃貸人と転借人の間には直接の契約関係が存在しない。賃貸借契約の解除は、契約当事者である賃借人の債務不履行という客観的事実に基づいて行われるべきものである。したがって、適法な転貸借という事情があっても、解除の要件として、当事者以外の第三者である転借人に対してまで催告を行う必要はないと解される。本件においても、賃借人への催告が適法になされた以上、転借人に支払の機会を与えなかったとしても解除の効力は妨げられない。
結論
賃貸人は転借人に対して催告を行う必要はなく、賃借人への催告のみで賃貸借契約を有効に解除できる。
実務上の射程
適法な転貸借における合意解除は転借人に対抗できない(民法613条3項)が、本判例の示す債務不履行解除は、転借人の承諾なく転借人に対抗できる。答案上では、債務不履行による賃貸借の終了と転貸借の帰趨(転貸借は履行不能により終了する)を論じる際の前提として活用する。
事件番号: 昭和35(オ)251 / 裁判年月日: 昭和37年4月12日 / 結論: 棄却
一 第一審及び原審における訴訟代理権の欠缺をいう所論は、訴訟委任の手続がすべて適式に行われていることが記録上認められ、右欠缺を疑うべき点が見当らないから採用できない。 二 賃料債務不履行による賃貸借解除をするには、転借人に対する催告を要しない。