二個の建物が全体として一個の経済上の用途に供せられるように造られ、附加一体の物と認められる場合には、坪数や屋根の形式の相違のみで抵当権の効力の及ぶ範囲を判断すべきでなく、更に特段の事情の存しない限り、右二個の建物を別個独立の物として抵当権の効力が一方にのみ及ぶと判断するのは審理不尽、理由不備といわねばならない。
抵当権の効力の及ぶ範囲について審理不尽理由不備があるとされた事例
民法370条,民訴法395条1項6号
判旨
民法370条本文に基づき抵当権の効力が及ぶ「付加して一体となっている物」か否かは、複数の建物が全体として一個の経済上の用途に奉仕するように構造されているか否かを基準として判断すべきである。
問題の所在(論点)
既存建物に設定された抵当権の効力が、その後に増築された建物部分にも及ぶか。換言すれば、増築部分が民法370条本文の「付加して一体となっている物」に該当するか、あるいは独立した別個の建物となるかが問題となる。
規範
民法370条本文に基づく抵当権の効力の限界を定めるにあたっては、二個の建物が全体として一個の経済上の用途に奉仕するように構造されているか否かを基準とすべきである。この判断において、増築部分の坪数が既存部分より多いことや、材料の真新しさ、屋根の形式の相違といった点は、直ちに独立性を肯定させる事情とはならない。
重要事実
抵当権の目的である既存建物(建物二)に隣接して、被上告人が本件建物を増築した。本件建物は大部分に新しい材料が使用され、屋根の形状も既存部分(方形造)とは異なる切妻造であり、一方を取り壊しても他方の構造に影響がない状態であった。しかし、両者は玄関が一つで、柱を共通にし、外観上一個の建物を呈していた。また、内部の中廊下や居室が両建物にまたがっており、便所は増築部分にしかない等、利用上も一体化していた。
事件番号: 昭和35(オ)856 / 裁判年月日: 昭和39年1月30日 / 結論: 破棄差戻
建物を目的とする代物弁済予約の効力が、右予約後右建物に加えられた築造部分に及ぶかどうかを判断するにつき、建物の物理的構造のみに依拠し、取引または利用の対象として観察した建物の状況を勘案しなかつたのは、審理不尽理由不備の違法がある。
あてはめ
本件では、増築部分と既存建物が玄関を共有し、内部に障壁のない居室が両建物にまたがって配置されている。さらに、柱を共通にし、便所が増築部分にしかない等、利用上の機能が分かち難く結合している。このような状態は、両者が「全体として一個の経済上の用途に奉仕するように構造されている」といえる。材料の新旧や屋根の形式、構造上の分離可能性といった事情は、この一体的な経済的用途を否定するに足りる理由にはならない。
結論
本件建物は既存建物に付加して一体となっている物と認められ、既存建物への抵当権の効力が及ぶ。したがって、これらを別個独立の物と判断した原判決には審理不尽・理由不備がある。
実務上の射程
建物が増築された際の抵当権の効力範囲(附合物か別個の建物か)の判断基準として確立している。答案では、単なる物理的結合の有無だけでなく、玄関・便所の共用や内部構造の連続性から「一個の経済上の用途」を認定する際の規範として引用する。
事件番号: 昭和34(オ)405 / 裁判年月日: 昭和37年3月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地代家賃統制令上の「併用住宅」に該当するためには、事業用部分の床面積制限を満たし、かつ借主自身が居住し、その事業主であることを要する。建物の階下を他人に賃貸し、自らは二階に居住しているに過ぎない場合は、同令の「併用住宅」には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、本件建物の階下(12坪6…