建物を目的とする代物弁済予約の効力が、右予約後右建物に加えられた築造部分に及ぶかどうかを判断するにつき、建物の物理的構造のみに依拠し、取引または利用の対象として観察した建物の状況を勘案しなかつたのは、審理不尽理由不備の違法がある。
建物を目的とする代物弁済予約の効力が及ぶ範囲を判断するにつき審理不尽理由不備の違法があるとされた事例。
民法482条,民法370条,民訴法395条6号
判旨
建物に加えられた築造部分が従前の建物と一体の一個の建物を構成するか否かは、物理的構造のみならず、取引または利用上の観点から独立性を有するか否かを総合して判断すべきである。
問題の所在(論点)
建物に増築された部分が、従前の建物と一体の「一個の建物」として不動産登記法上または実体法上の同一性を維持しているといえるか。その判断基準が問題となる。
規範
建物に築造部分が加えられた際、それが従前の建物と一体(一個の建物)となるか、別個独立の建物となるかは、物理的構造のみならず、取引または利用の対象としての建物の状況を勘案して判断する。具体的には、①建物の物理的構造(種類・構造・面積・造作・接着程度等)、②所有者による登記等の事情、③当該築造部分が独立して取引・利用され得るか否か、という諸事情を総合考慮すべきである。
重要事実
上告人Aは、訴外会社との間で木造2階建店舗兼居宅につき根抵当権設定および代物弁済予約を行った。その後、Aは当該建物に地下室付の2階建部分を増築した。原審は、増築部分が従前の建物と柱を共通にし、屋根や壁が接続している等の物理的接合状態のみに基づき、両者が一体となって同一性を維持していると認定し、代物弁済予約の効力が築造部分にも及ぶと判断した。
事件番号: 昭和35(オ)1420 / 裁判年月日: 昭和37年4月26日 / 結論: 破棄差戻
二個の建物が全体として一個の経済上の用途に供せられるように造られ、附加一体の物と認められる場合には、坪数や屋根の形式の相違のみで抵当権の効力の及ぶ範囲を判断すべきでなく、更に特段の事情の存しない限り、右二個の建物を別個独立の物として抵当権の効力が一方にのみ及ぶと判断するのは審理不尽、理由不備といわねばならない。
あてはめ
原審は、検証調書に基づき「柱を共通にする」等の物理的構造を重視したが、証拠によれば一階部分の通行口付近の柱を確認したにすぎず、建物全体の接合状態を十分に認定したとはいえない。また、物理的構造の認定に終始し、増築部分の面積や構造、所有者が一個の建物として登録した経緯、および取引・利用上の独立性の有無といった客観的・社会的側面の審理を尽くしていない。
結論
物理的構造のみで一体性を肯定した原判決には審理不尽・理由不備の違法があり、破棄・差し戻しを免れない。増築部分が取引上独立した建物といえない場合に限り、代物弁済予約の効力が及ぶ。
実務上の射程
建物の合体や附合(民法242条)が問題となる場面で、一個の建物としての同一性を判定する際のリーディングケースである。物理的構造(強固な付着)だけでなく、経済的・機能的独立性の欠如という観点から論じる際に活用する。
事件番号: 昭和42(オ)550 / 裁判年月日: 昭和44年5月30日 / 結論: 棄却
従来母屋に接続した簡単なバラック建附属建物にすぎなかつた部分を倍以上に拡げて店舗に改造し、母屋との間に板壁による間じきりをし、母屋とは全く独立して使用できるようにしたなど原判示の事情(原判決理由参照)がある場合においては、柱および板壁を共通にし、建物が屋根続きで外見上は一体の建物の観を呈していても、右改造部分につき区分…
事件番号: 昭和35(オ)848 / 裁判年月日: 昭和37年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請負契約により新築された建物の所有権帰属に関し、請負人が代金未払の状態で建物を注文者に引き渡した場合、建物の所有権は注文者に移転する。また、実態のない所有権移転登記が通謀虚偽表示に該当する場合、当該登記に基づく権利主張は認められない。 第1 事案の概要:請負人EおよびFは、注文者Dから本件建物の建…