当事者の主張しない事実に基づき判断したとは認められないとされた事例。
判旨
請負契約により新築された建物の所有権帰属に関し、請負人が代金未払の状態で建物を注文者に引き渡した場合、建物の所有権は注文者に移転する。また、実態のない所有権移転登記が通謀虚偽表示に該当する場合、当該登記に基づく権利主張は認められない。
問題の所在(論点)
建物建築請負契約における完成建物の所有権移転時期、および通謀虚偽表示による登記の効力が問題となる。
規範
建物建築請負契約において、完成した建物の所有権が誰に帰属するかは、特約がない限り、材料の提供者や引渡しの有無によって決せられる。請負人が材料を提供して完成させた建物であっても、請負人が注文者に当該建物を引き渡したときは、その所有権は注文者に移転する。また、実体的な権利移転を伴わない通謀による登記は無効である。
重要事実
請負人EおよびFは、注文者Dから本件建物の建築を請け負った。Eらは請負代金の過半の支払を受けていなかったが、将来の火葬場経営の利益から残代金の弁済を受けることを予定し、かつ請負代金債権を先取特権で確保することを前提として、建物完成後直ちにDへ現実の引渡しを行った。その後、Dと上告人は通謀して、実体上の原因がないにもかかわらず、Dから上告人への所有権移転登記を経由した。上告人は、Eらから代物弁済として所有権を取得したと主張して、所有権を争った。
あてはめ
まず、本件建物は完成後直ちに請負人Eらから注文者Dに対して「現実の引渡し」がなされている。この引渡しにより、仮に材料提供等の事情から当初Eらに所有権が帰属していたとしても、所有権はDに移転したといえる。次に、上告人が主張する「Eらからの代物弁済」という取得原因については証拠上認められず、むしろDと上告人が通謀してなした虚偽の登記であると認められる。したがって、上告人は有効に所有権を取得したとはいえない。
事件番号: 昭和34(オ)868 / 裁判年月日: 昭和35年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有権の帰属に関し、家賃取立の実績等の事実が認められる場合であっても、他の証拠により導かれる所有権の推定を直ちに覆すに足りるものではない。 第1 事案の概要:本件建物の所有権の帰属をめぐり、上告人(控訴人)は、自らが家賃の取立を行ってきた事実などを主張し、証拠を提出して自らの所有を主張した。…
結論
本件建物の所有権はDに帰属し、上告人への所有権移転登記は通謀虚偽表示として無効であるため、上告人の所有権主張は認められない。
実務上の射程
請負代金が未払であっても、引渡しという事実に着目して所有権移転を認める判断枠組みは、不動産物権変動の原則に合致する。答案上は、請負の帰属(特約・材料提供)を論じた後、引渡しによる移転という二段構えの構成で活用できる。また、通謀虚偽表示(民法94条1項)の認定において、登記原因の欠如と当事者間の合意を重視する実務上の運用を示している。
事件番号: 昭和30(オ)148 / 裁判年月日: 昭和31年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産を対象とする代物弁済において、その物権変動は当事者の意思表示のみによって生じ、登記の具備は効力発生の要件ではない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Cに対する債務の弁済に代えて、自己が所有する本件建物を譲渡する旨の代物弁済を行った。その後、上告人は本件建物の所有権に基づき、抹消登記手続等を求…
事件番号: 昭和28(オ)1170 / 裁判年月日: 昭和31年9月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】作成名義人の否認がある文書について、裁判所が作成名義人以外の者によって作成されたものであると認定した上で、その成立の真正を否定し証拠力を排斥することは適法である。 第1 事案の概要:上告人らが証拠として提出した家屋売渡証(乙第6号証および乙第7号証)について、その作成名義人とされているAおよびDは…
事件番号: 昭和36(ヤ)28 / 裁判年月日: 昭和38年6月20日 / 結論: 却下
第二審で第一審判決事実摘示のとおり第一審口頭弁論の結果を陳述した場合、たとい第一審において主張された事実でも、第一審判決事実摘示に記載せられていないかぎり、第二審の審理の対象とならない。