注文者が、請負契約の履行として、請負人に対し、全工事代金の半額以上を棟上げのときまでに支払い、その後も工事の進行に応じ残代金の支払をして来たような場合には、特段の事情のないかぎり、建築された建物の所有権は、引渡をまつまでもなく、完成と同時に原始的に注文者に帰属するものと解するのが相当である。
請負契約に基づき建築された建物所有権が原始的に注文者に帰属するとされた事例
民法632条
判旨
注文者が請負人に対し、全工事代金の半額以上を棟上げまでに支払い、その後も工事の進行に応じて残代金を支払ってきた場合、特段の事情のない限り、建物の所有権は完成と同時に注文者に原始的に帰属する。
問題の所在(論点)
請負契約により建築された建物の原始的帰属先。特に、注文者が代金の相当部分を既払である場合に、引渡し前であっても注文者に所有権が帰属するか。
規範
建物建築請負契約において、注文者が工事代金の全額または大部分を支払っている場合には、特段の事情のない限り、建築された建物の所有権は、引渡しを待たず完成と同時に注文者に原始的に帰属する。
重要事実
注文者(被上告人)は、請負人(上告人)に対し、本件建物を含む4戸の建物建築を注文した。注文者は、全工事代金の半額以上を棟上げのときまでに支払い、さらに工事の進行に応じて残代金の支払いを行っていた。その後、建物は昭和39年3月末以前に完成したと認められる状態に至った。
事件番号: 昭和35(オ)848 / 裁判年月日: 昭和37年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請負契約により新築された建物の所有権帰属に関し、請負人が代金未払の状態で建物を注文者に引き渡した場合、建物の所有権は注文者に移転する。また、実態のない所有権移転登記が通謀虚偽表示に該当する場合、当該登記に基づく権利主張は認められない。 第1 事案の概要:請負人EおよびFは、注文者Dから本件建物の建…
あてはめ
本件では、注文者は棟上げ時までに代金の半額以上を支払い、その後も進捗に合わせて支払いを継続している。このような支払状況は、代金の対価として建物の所有権を注文者に取得させる意思に基づくものと評価できる。したがって、特段の事情がない本件においては、建物としての完成時点をもって、注文者がその所有権を原始的に取得したといえる。
結論
本件建物の所有権は、建物が完成した時点において注文者に帰属する。したがって、請負人の上告は棄却される。
実務上の射程
請負契約における所有権帰属の原則(材料提供者帰属説)の例外を示す判例である。特約がない場合でも、代金の支払状況という事実から所有権帰属の合意を推認する手法をとっており、答案では「特段の事情」の有無を検討する際の有力な考慮要素として用いる。
事件番号: 昭和45(オ)1117 / 裁判年月日: 昭和46年3月5日 / 結論: 棄却
請負人が、材料全部を提供して、注文者の所有する土地に建物を建築した場合において、請負契約が分譲を目的とする建物六棟につき一括してされたものであり、請負人は、その内三棟については注文者ないしこれから分譲を受けた入居者らに異議なくその引渡を了し、注文者から、請負代金の全額につきその支払のための手形を受領し、その際、六棟全部…
事件番号: 昭和36(ヤ)28 / 裁判年月日: 昭和38年6月20日 / 結論: 却下
第二審で第一審判決事実摘示のとおり第一審口頭弁論の結果を陳述した場合、たとい第一審において主張された事実でも、第一審判決事実摘示に記載せられていないかぎり、第二審の審理の対象とならない。
事件番号: 昭和32(オ)74 / 裁判年月日: 昭和33年3月6日 / 結論: 棄却
数個の間接事実をそう合して主要事実を認定した場合、右間接事実の一につき適法な証拠にもとづかないで事実を認定した違法があつても、残余の間接事実により前記主要事実が認定できる以上、右違法は民訴第三九四条にいわゆる判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背にあたらない。