請負人が、材料全部を提供して、注文者の所有する土地に建物を建築した場合において、請負契約が分譲を目的とする建物六棟につき一括してされたものであり、請負人は、その内三棟については注文者ないしこれから分譲を受けた入居者らに異議なくその引渡を了し、注文者から、請負代金の全額につきその支払のための手形を受領し、その際、六棟全部についての建築確認通知書を注文者に交付したなど、判示の事実関係があるときは、右確認通知書交付にあたり、六棟の建物につき完成と同時に注文者に所有権を帰属させる旨の合意がなされ、いまだ引渡しのされていない建物も完成と同時に注文者の所有に帰したものと認めることができる。
請負人が材料全部を提供して建築した建物が完成と同時に注文者の所有に帰したものと認められた事例
民法176条,民法655条
判旨
請負人が材料全部を提供して建築した建物の所有権は、原則として引渡時に注文者に移転するが、特約があれば完成と同時に注文者に帰属する。本件では、代金支払のための手形受領や建築確認通知書の交付等の事情から、完成時の所有権帰属に関する黙示の合意が認められた。
問題の所在(論点)
請負人が材料の全部を提供して建築した建物の所有権帰属時期が問題となる。特に、引渡や代金完済前であっても、建物完成と同時に注文者に所有権を帰属させる旨の黙示の合意を認めることができるか。
規範
建物建築請負契約において、請負人が材料全部を提供した場合、建物の所有権は原則として引渡時に請負人から注文者に移転する。しかし、当事者間に明示または黙示の特約がある場合には、引渡前や代金完済前であっても、建物完成と同時に注文者が所有権を取得することを妨げない。
重要事実
上告人(請負人)は、訴外会社D(注文者)から分譲目的の建物6棟の建築を一括して請け負い、材料を提供して建築した。上告人は、全代金支払のための手形を受領し、Dの支払能力に疑いを抱いていなかった。その際、上告人はDに全6棟の建築確認通知書を交付した。また、6棟のうち3棟については異議なく引き渡されており、本件建物が完成後直ちに引き渡されなかったのは、単に入居者が未定であったという事情によるものであった。
事件番号: 昭和35(オ)848 / 裁判年月日: 昭和37年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請負契約により新築された建物の所有権帰属に関し、請負人が代金未払の状態で建物を注文者に引き渡した場合、建物の所有権は注文者に移転する。また、実態のない所有権移転登記が通謀虚偽表示に該当する場合、当該登記に基づく権利主張は認められない。 第1 事案の概要:請負人EおよびFは、注文者Dから本件建物の建…
あてはめ
本件では、上告人が代金全額に相当する手形を受領した際に建築確認通知書を交付している事実は、所有権を注文者に委ねる意思表示と評価できる。また、分譲目的の6棟を一括して請け負い、他の3棟については既に入居者に引き渡されていることから、本件建物のみを別異に扱う合理的な理由はなく、単に入居者不在という偶然の事情で占有が継続していたに過ぎない。これらの事実に照らせば、建物完成と同時に所有権を注文者に帰属させる旨の黙示の合意があったといえる。
結論
本件建物の所有権は、完成と同時に注文者である訴外会社Dに帰属する。
実務上の射程
請負人の材料提供事案における所有権帰属の原則(引渡時説)を維持しつつ、実務上は「特約」の認定を柔軟に行うことで、注文者側の利益保護を図る射程を持つ。答案上は、代金支払の状況や建築確認通知書の交付、分譲目的といった具体的事実から、黙示の合意を認定する際の判断枠組みとして活用すべきである。
事件番号: 昭和44(オ)538 / 裁判年月日: 昭和44年9月12日 / 結論: 棄却
注文者が、請負契約の履行として、請負人に対し、全工事代金の半額以上を棟上げのときまでに支払い、その後も工事の進行に応じ残代金の支払をして来たような場合には、特段の事情のないかぎり、建築された建物の所有権は、引渡をまつまでもなく、完成と同時に原始的に注文者に帰属するものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和35(オ)406 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
証人らが訴訟当事者の一方の妻あるいは妻の兄の関係にあるとしても、その一事によつて右証人らが証人能力を有しないとか、証言の証拠価値が薄弱であるとかは断定できない。