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賃借地上の賃借人所有家屋から独立した家屋とは認められない増築部分に第三者名義の独立の保存登記をしても、賃貸人に無断で賃借地上の物件を他人名義に変更したときは契約を解除しうるとの特約条項に当らないとされた事例。
判旨
増築部分が従前の建物の構成部分(附合物)である場合、これについて後になされた別個の登記は無効であり、その登記名義の変更は真実の権利者の権利行使を妨げるものではない。
問題の所在(論点)
増築部分が従前の建物の一部である場合、その部分についてなされた別個の登記の効力、およびその登記名義の変更が真実の所有者の権利行使に不利益を及ぼすか。
規範
増築部分が構造上および利用上の独立性を有さず、従前の建物の一部(附合物)と認められる場合、当該部分は主たる建物と一体として一個の不動産を構成する。したがって、増築部分のみを対象とした別個の登記は、不動産登記法上の公示の原則に反し、実体関係を反映しない無効な登記となる。
重要事実
上告人は建物所有者であるが、その建物になされた増築部分が従前の建物の一部を構成していた。しかし、当該増築部分について後から別個の登記がなされ、さらにその登記名義が第三者(訴外D)に変更された。上告人は、この登記名義の変更が自身の権利行使を妨害し不利益を与えるものであるとして争った。
あてはめ
本件増築部分は従前の建物の一部であると認定される。この場合、増築部分は従前の建物の所有権に吸収されるため、これについて後からなされた別個の登記は法律上無効である。無効な登記に基づく名義変更が行われたとしても、それは実体法上の権利関係に何ら影響を及ぼさない。したがって、名義がDに変更されたとしても、上告人が本来の建物所有権に基づいて権利を行使することに法的障害は生じず、不利益を与えるおそれもないと解される。
事件番号: 昭和38(オ)489 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
民法第二四二条但書は、附合した物が不動産の一部と認められて全然独立の存在を失う場合には、適用の余地がないものと解すべきである。
結論
増築部分についてなされた別個の登記は無効であり、その名義変更は上告人の権利行使を妨げないため、上告人の主張は認められない。
実務上の射程
附合(民法242条)が生じた建物の登記の効力に関する基本判例である。建物の一体性が認められる以上、二重登記のような状態が生じても、後になされた登記は無効であると断じ、権利保護の必要性を否定する論理として答案で活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…
事件番号: 昭和38(オ)121 / 裁判年月日: 昭和39年5月12日 / 結論: 棄却
浴場、居宅、物置、便所および廊下を以て構成される建物のうち、ボイラー室全部と居宅の北半分程をとりこわしその跡へ新たな材料を使用して土台から新たに築き直して従来の浴場並びに居宅とは棟の方向を異にする一棟を建てて浴場とする等の改造をした場合であつても、その後完成された建物と従前の建物とを比較して原判示のような事実(一審判決…
事件番号: 昭和37(オ)530 / 裁判年月日: 昭和38年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】1棟の建物を区分して買い受けた複数の者が、各建物部分の敷地を個別に賃借した場合、建物の共有登記や賃料の一括支払がなされていても、賃貸借関係は個別に成立すると解される。 第1 事案の概要:D所有の土地上にあった1棟の2戸建建物のうち、南側部分をB1が、北側部分をB2がそれぞれDから買い受けた。その際…
事件番号: 昭和41(オ)680 / 裁判年月日: 昭和42年9月29日 / 結論: 破棄差戻
一 借地権者から建物とともに借地権を譲りうけた第三者が、該借地権譲受について賃貸人の承諾のえられぬまま、右建物に増築等の工事を施したときは、判示のような場合を除き、譲受当時の原状に回復したうえでなければ買取請求権を行使できないものと解すべきである。 二 所有者の異なる数筆の土地に跨つて存在する建物についての借地法第一〇…