判旨
不動産の従として附合した物が構成部分となった場合、独立の建物としての経済的効力を有しない限り、区分所有権は成立せず不動産所有者がその所有権を取得する。この場合、民法370条により抵当権の効力は当該増設部分にも当然に及ぶ。
問題の所在(論点)
既存家屋に付加された増設建物について区分所有権が成立するか、それとも民法242条の附合により既存家屋の構成部分となるか。また、その場合に既存家屋への抵当権の効力が当該増設部分に及ぶか(民法370条)。
規範
不動産の従として附合した物が構成部分となった場合、又は社会通念上不動産の一部分と認められる状態となったときは、民法242条により不動産所有者が附合物の所有権を取得する。区分所有権(民法208条※当時)が成立するためには、その部分が独立の建物と同一の経済上の効力を全うし得ることを要し、他の部分と併合しなければ建物としての効力を生じ得ない場合には認められない。この判断にあたっては、社会通念上の経済的利用の独立性と、事実上の分割使用の可能性を混同すべきではない。
重要事実
上告人A1が所有する既存家屋(本件家屋)に対し、後に増設建物が加えられた。この増設建物は本件家屋に従として付加されており、物理的・機能的に本件家屋の構成部分をなすものであった。本件家屋には抵当権が設定されており、競売手続において増設部分の表示が欠けていたものの、当該抵当権の効力が波及するかが争点となった。
あてはめ
本件増設建物は既存家屋の構成部分をなし、両者が合して一個の建物を構成している。増設建物単独では独立の建物としての経済上の効力を全うし得ず、社会通念上の経済的利用の独立性が認められない。したがって、増設部分は区分所有権の客体とはならず、既存家屋の所有者の所有に帰する附合物といえる。このような附合が生じた場合、民法370条に基づき、不動産(既存家屋)に設定された抵当権の効力は当然に増設部分にも及ぶと解される。
結論
増設部分は既存家屋に附合しており、区分所有権は成立しない。既存家屋を目的とする抵当権の効力は増設部分にも及ぶ。
実務上の射程
建物の増築部分が「附合物」か「区分所有権の対象」かを区別する基準として「経済的利用の独立性」を重視する。答案上は、構造上の独立性のみならず、機能面での独立性を検討する際の規範として活用できる。抵当権の効力範囲(370条)を論じる際、附合の成否を先行して検討する文脈で極めて重要である。
事件番号: 昭和33(オ)348 / 裁判年月日: 昭和35年2月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の増築部分が既存建物と不可分的に結合して一体化し、客観的に別個独立の建物と認められない場合には、当該部分は既存建物の構成部分となり、その登記の有無にかかわらず既存建物の所有権に吸収される。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Dが所有し後に競売に付された既存建物の東側に、玄関、廊下、食堂、居室等を…