判旨
譲渡担保に基づく建物明渡請求において、契約により所有権が移転したと認められるならば、担保権の具体的性質(帰属型か信託的譲渡型か等)を詳細に判別せずとも請求は認容され、また価格の著しい不均衡のみでは公序良俗違反(暴利行為)とはならない。
問題の所在(論点)
1. 譲渡担保に基づく明渡請求において、譲渡担保の具体的な法的性質(帰属型・清算型等)を特定する必要があるか。 2. 目的物の価額と代金の著しい不均衡のみをもって、譲渡担保契約が暴利行為として無効となるか。
規範
1. 譲渡担保契約に基づき目的物の所有権が移転したと認められる場合、建物明渡請求を基礎付ける要件としては、当該契約により所有権が移転した事実の認定で足り、譲渡担保の具体的な法的構成(種類や型)までを確定させる必要はない。 2. 契約の内容が暴利行為として公序良俗に反し無効となるためには、単に目的物の価額と代金との間に著しい不均衡があるだけでは足りず、相手方の窮迫、軽率、無経験に乗じてなされたなどの事情を要する。
重要事実
上告人(被告)と被上告人組合(原告)との間で、本件建物の所有権を被上告人に移転させる譲渡担保契約が締結された。被上告人はこの契約に基づき建物の所有権を取得したとして、上告人に対し建物の明渡しを求めた。これに対し上告人は、(1)譲渡担保の型が不明確であり審理不尽であること、(2)建物の価額に比して代金が著しく低額であり公序良俗に反すること、(3)建物の登記上の表示と実態が異なるため同一性が欠如していること等を主張して争った。
あてはめ
1. 譲渡担保は所有権移転の形式をとる以上、契約により「一応被上告人組合に移転した」との事実が認められれば、所有権に基づく明渡請求の根拠として十分であり、それ以上の細分化された型の認定は不要である。 2. 本件では、被上告人が上告人の経済的困窮や無知、無経験に乗じて契約を締結させた事実は証拠上認められない。したがって、単に建物の価額と代金の均衡がとれていないという事実のみでは、本件契約を暴利を目的とする法律行為(民法90条)と断ずることはできない。 3. 建物の同一性については、実在する建物が一個である以上、登記上の地番表示の齟齬は同一性に影響しない。
結論
1. 譲渡担保の具体的種類を確定せずとも、所有権移転の事実に基づき明渡請求は認められる。 2. 公序良俗違反の主張は排斥され、上告人の占有は不法占拠となる。請求を認容した原判決は正当であり、上告棄却。
実務上の射程
譲渡担保における所有権的構成を前提とした、明渡請求の要件事実の簡略化を認める実務上の指針となる。また、暴利行為の成立要件として「客観的な価値の差」だけでなく、相手方の状態に乗じるという「主観的態様(利用意思)」を重視する判例法理を確認する際にも活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)99 / 裁判年月日: 昭和33年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除が権利の濫用に該当するか否かは、賃料受領拒絶や立退要求等の事実のみをもって直ちに判断されるものではなく、諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)が賃貸借契約を解除した事案において、上告人(賃借人)側は、被上告人による賃料受領の拒絶や、不当な立退…