いわゆる社宅の使用料が公定賃料額に比べて低額であつたことからその使用関係に借家法の適用がないとされた事例
判旨
建物の使用料が公定賃料額等と比較して著しく低額である場合には、当該建物の利用関係は賃貸借ではなく使用貸借(またはそれに準ずる関係)と解され、借家法の適用が否定される。
問題の所在(論点)
建物の利用に関する合意において、支払われるべき対価(使用料)が公定賃料や相場に比して著しく低額である場合に、当該契約に借家法が適用されるか。すなわち、賃貸借(借家法適用あり)と使用貸借(適用なし)の区別が問題となる。
規範
借家法(現・借地借家法)の適用を受ける「賃貸借」に該当するか否かは、対価支払の有無だけでなく、その対価が建物の利用に対する適正な賃料といえるかによって判断される。具体的には、約定の使用料が公定賃料額や世間一般の賃料相場と比較して著しく低額である場合には、実質的に賃貸借としての対価性を欠くものとして、借家法の適用は否定される。
重要事実
上告人と相手方との間で本件家屋の利用に関する契約が締結された。この契約において定められた使用料は、本件家屋を賃貸した場合に適用されるべき当時の公定賃料額と比較しても極めて低額なものであった。原審は、この使用料の低廉さを理由に、本件契約は借家法の適用を受ける賃貸借には当たらないと判断したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
本件における使用料は、公定賃料額に比較して低額であると認定される。このような低額な対価は、建物の使用収益に対する対価としての実質を欠くものであり、通常の賃貸借における賃料とは性質を異にする。したがって、本件契約は賃貸借としての実力(じつりょく)を持たず、使用貸借ないしそれに類する無償に近い関係と評価せざるを得ない。ゆえに、借主を強力に保護する借家法の適用を認めるべき基礎を欠いているといえる。
結論
本件契約には借家法の適用はなく、原審の判断は妥当であるとして上告を棄却した。
実務上の射程
対価が著しく低額な場合に借地借家法の適用を否定する「使用貸借的利用」の典型例。実務上、親族間や雇用関係に伴う低廉な住居提供において、借地借家法による解約制限(正当事由等)を回避する根拠として引用される。ただし、単なる相場との乖離だけでなく、公定賃料等との比較や、無償に近いという実態が必要である点に留意する。
事件番号: 昭和35(オ)1042 / 裁判年月日: 昭和37年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の使用関係が民法上の賃貸借契約に基づかない特別な法律関係にある場合には、借家法(現・借地借家法)の適用を受けない。 第1 事案の概要:上告人らは本件家屋を使用していたが、その使用関係の法的性質が争点となった。原審は、証拠関係に基づき、本件の使用関係は賃貸借契約に基づくものではないと認定した。こ…