一畳あたり月一、〇〇〇円で貸しうる六畳七畳二室を借り受け使用(ただし七畳の方は家主と共用)する間借人が毎月室代名義で一、〇〇〇円ずつを家主に支払つていても、間借人が家主の妻の伯父という関係にあるときは、右金員は室使用の対価というよりは右関係に基づく謝礼とみるのが相当で、右使用契約は賃貸借でなく使用貸借である。
間借人の毎月一、〇〇〇円の支払いを賃料でなく謝礼であるとし、使用貸借の成立を認めた事例
民法593条,民法601条
判旨
建物の使用に対し支払われる金員が、相場に比して著しく低額であり、かつ親族等の特殊関係に基づく謝礼の趣旨で授受されている場合には、賃料としての性質を欠き、当該契約は賃貸借ではなく使用貸借と解するのが相当である。
問題の所在(論点)
建物の使用に際して「室代」名目での金銭授受がある場合において、その額が著しく低額であり親族関係に基づくものであるとき、当該契約は賃貸借(民法601条)に該当し対抗力が認められるか。
規範
契約が賃貸借(民法601条)か使用貸借(民法593条)かは、形式的な対価の支払の有無だけでなく、支払われる金員の性質が「使用の対価」といえるか否かによって決する。具体的には、相場との乖離、当事者間の特殊関係、および支払の経緯を総合考慮し、その金員が対価としての実質を持たず謝礼等の趣旨に留まる場合には、賃貸借の成立を否定すべきである。
重要事実
所有者A1は、妻の伯父A2に対し、本来の賃料相場が1畳あたり月1,000円(計13,000円相当)である建物の2室を、月1,000円で貸していた。また、同居する妻の弟A3に対しても、同様に月1,000円の支払で1室を貸していた。これらはいずれも「室代ではないが室代ということにして」支払われていた。その後、被上告人がA1から本件建物の所有権を取得したため、A2およびA3は賃借権の対抗力を主張した。
あてはめ
本件における月1,000円の支払は、当時の相場と比較して極めて低額である。また、A2は妻の伯父、A3は妻の弟であり、食事を共にするなどの密接な親族関係が存在する。授受の際も「室代ではないが室代ということにする」との合意があり、これは使用の対価というよりも、特殊関係に基づく「謝礼」の趣旨でなされたものと評価できる。したがって、本件金員には賃料としての実質が認められず、対価性を欠くものといえる。
結論
本件各契約は賃貸借ではなく使用貸借である。使用貸借には借家法(当時)1条の適用はなく、占有者は新所有者に対して建物の使用権を対抗することができない。
実務上の射程
建物の引き渡しによる対抗力の有無が争点となる場面で、身内間の低額な金銭授受の性質を決定する基準として用いる。賃料が低額すぎる場合、対抗力のある賃貸借ではなく、承継されない使用貸借として処理する際の論拠となる。
事件番号: 昭和33(オ)35 / 裁判年月日: 昭和33年6月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除権の行使が信義則に反するか否かは、賃借人の生活上の困窮や住居喪失の打撃と、賃貸人側の諸事情を比較衡量して判断すべきである。また、賃料支払請求がなされた際、賃借人が弁済供託の事実を主張立証している場合には、裁判所はその有効性を審理判断しなければならない。 第1 事案の概要:賃貸人(被…