会社が従業員の福利厚生施設の一つとして、一般の建物賃貸借における賃料より低廉な使用料で、その従業員に限つて使用させている等原判示の如き事情(原判決理由参照)がある社宅の使用については、たとえ、入居願書の提出や社宅規則がなくても、借家法の適用はない。
借家法の適用されない社宅と認められた事例。
民法601条,借家法3条
判旨
社宅の使用関係が、賃料が低廉である等の特殊な契約関係にある場合、借家法(現借地借家法)の適用を受ける一般の賃貸借とは異なり、従業員の退職に伴い当然に終了し、明渡義務が生じる。
問題の所在(論点)
雇用関係に伴い提供される社宅の使用関係について、一般の建物賃貸借と同様に借家法(現借地借家法)が適用され、退職後も正当事由がない限り明渡しを拒めるか。
規範
社宅の使用関係が、一般の建物賃貸借における賃料よりも著しく低廉な使用料の設定、役職に応じた住戸の割り当て、及び雇用関係に付随して提供される等の実態を有する場合、それは借家法の適用を受ける一般の賃貸借関係ではなく、雇用契約と密接に結びついた「社宅使用に関する特殊の契約関係」と解するのが相当である。この場合、特段の事情がない限り、雇用関係の終了(退職)が当該使用関係の終了原因となる。
重要事実
上告人は、被上告人会社に勤務し、同社が所有する家屋を社宅として使用していた。当該社宅の使用料は役職別に定められていたが、一般の建物賃貸借における賃料と比較して低廉なものであった。上告人は昭和34年3月3日に被上告人会社を退職したが、その後も当該家屋に居住し続けたため、被上告人が家屋の明渡しを求めて提訴した。
あてはめ
本件家屋の使用関係は、使用料が一般の賃料より低廉であることや、役職別に定められる等の特殊性を有している。このような実態は、居住の安定という賃貸借の本来的目的よりも、企業の福利厚生や業務遂行の便宜という雇用上の目的に主眼があるといえる。したがって、本件は借家法の適用を受ける一般の賃貸借ではなく、社宅使用に関する特殊の契約関係に該当する。この性質に鑑みれば、雇用関係の終了である退職とともに、使用の権原も消滅すると解するのが論理的である。
結論
上告人は、被上告人会社を退職した時点で、本件家屋の使用権原を失い、これを明渡す義務を負う。借家法(現借地借家法)に基づく更新拒絶の正当事由等は問題とならない。
実務上の射程
社宅の性格が「賃貸借」か「使用貸借(または特殊契約)」かの区別に用いる。賃料が極めて低廉で、雇用契約に密接に関連している事案では、借地借家法の適用を否定し、退職による当然終了を認める論拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)137 / 裁判年月日: 昭和31年11月16日 / 結論: 棄却
従業員専用の寮の使用関係において、世間並みの家賃相当額を使用料として支払つている等、原審認定のような事実(原判決理由参照)があるときは、その使用関係を賃貸借と判断して妨げない。