会社とその従業員との間における有料社宅の使用関係が賃貸借であるかその他の契約関係であるかは、各場合における契約の趣旨いかんによる。
いわゆる有料社宅の使用関係の性質
民法601条
判旨
会社と従業員との間の有料社宅の使用関係が賃貸借か否かは、契約の趣旨により定まる。社宅料が維持費の一部に過ぎず、従業員たる身分を保有する期間に限る趣旨であれば、賃貸借ではない特殊の契約関係と解される。
問題の所在(論点)
従業員が会社に対して支払う「社宅料」が存在する場合に、当該社宅の使用関係が賃貸借契約としての性質を有し、借家法(当時)等の保護を受けるか、それとも福利厚生目的の特殊な契約関係に留まるかが問題となった。
規範
会社と従業員との間の有料社宅の使用関係が賃貸借(民法601条)に該当するか否かは、画一的に決定し得るものではなく、各場合における契約の趣旨によって定まる。具体的には、対価性(賃料としての性質)の有無や、従業員としての身分と使用権限の結びつきの強弱により判断すべきである。
重要事実
会社(被上告人)は、従業員(上告人)に対し、本件家屋の一室を社宅として給与した。社宅料として月額36円を徴収していたが、これは従業員の能率向上と厚生施設の一助を目的としたものであった。また、社宅を使用できる期間は従業員たる身分を保有する期間に限定されていた。
あてはめ
本件における社宅料(月額36円)は、建物の使用に対する対価(賃料)としての実態を備えておらず、維持費の一部を補填するものに過ぎない。また、使用権の存続が従業員たる身分に随伴するものとされている点は、独立した賃貸借契約ではなく、雇用契約に付随する福利厚生の一環であることを示している。したがって、対価性および独立した契約の趣旨が認められないため、賃貸借関係は成立しないと評価される。
結論
本件社宅の使用関係は賃貸借関係ではなく、従業員の身分保有を前提とした特殊の契約関係である。
実務上の射程
社宅の使用関係が賃貸借か否かの境界線を示す。判例は、社宅料の額が近傍類似の賃料に比して著しく低廉であることや、雇用契約終了と同時に使用権が消滅する旨の合意があることを重視する。答案上は、対価性の有無を検討する際に「実費・維持費程度か否か」という視点で活用すべきである。
事件番号: 昭和37(オ)707 / 裁判年月日: 昭和39年3月10日 / 結論: 棄却
会社が従業員の福利厚生施設の一つとして、一般の建物賃貸借における賃料より低廉な使用料で、その従業員に限つて使用させている等原判示の如き事情(原判決理由参照)がある社宅の使用については、たとえ、入居願書の提出や社宅規則がなくても、借家法の適用はない。