判旨
雇用関係終了後に改めて締結された事実のない家屋の使用関係については、借家法(現・借地借家法)の適用はない。
問題の所在(論点)
雇用関係に伴って供与されていた社宅等の使用関係において、雇用終了後に借家法(現・借地借家法)の適用を受ける「賃貸借」が新たに成立したといえるか。
規範
建物の使用が雇用契約等に付随するものであり、独立した賃貸借契約の成立が認められない場合には、借家法(現・借地借家法)の適用はない。新たな契約が成立したと認めるには、身分的関係の消滅後に改めて合意がなされた事実が必要である。
重要事実
上告人らは、被上告人会社との雇用関係が終了した後も本件家屋に居住し続けていた。上告人らは、会社との間に身分的関係がなくなった後に、改めて本件家屋について新たな賃貸借契約を締結したと主張し、借家法の適用による居住権の保護を求めた。
あてはめ
原審が認定した事実によれば、上告人らが主張するような「新たな賃貸借契約の締結」という事実は認められない。身分的関係の消滅後に、当事者間で改めて賃貸借に関する合意がなされた事実がない以上、依然として雇用に付随する使用の域を出るものではないと評価される。
結論
新たな賃貸借契約の締結は認められず、本件における借家法の適用は否定される。
実務上の射程
社宅や寮の使用関係において、雇用契約終了後の占有が借地借家法の適用を受けるか否かの判断基準を示す。単に居住を継続しているだけでは足りず、賃貸借への切り替えの合意という客観的事実が必要であることを示唆する。
事件番号: 昭和43(オ)1327 / 裁判年月日: 昭和44年4月15日 / 結論: 棄却
原判決(引用する第一審判決)の認定した事実関係のもとでは、本件建物の利用関係は賃貸借ではなく、鉱員たる資格の存在をその使用関係存続の前提とする社宅に関する特殊な契約関係であつて、借家法の適用はない。