会社が銀行と手形取引契約を結び、会社の代表取締役が、担保貸主兼保証人として、銀行と右会社の債務を担保するため、自己所有の建物と同建物内に備え付けられている会社所有の機械・器具について工場抵当法第二条による根抵当権設定契約を締結し、その旨の登記を経由した場合においては、該根抵当権の効力は、右機械・器具にも及ぶものと解するものを相当とする。
工場抵当権の効力が第三者所有の機械・器具にも及ぶと認められた事例
工場抵当法2条,工場抵当法3条
判旨
工場抵当法2条に基づき、不動産とそれに備え付けられた機械器具に抵当権を設定する場合、不動産所有者と機械器具の所有者が異なるときであっても、双方が合意の上で一体として抵当権を設定し、所定の登記手続を経たときは、その効力は機械器具にも及ぶ。
問題の所在(論点)
工場抵当法2条により抵当権の効力が機械器具に及ぶためには、不動産と機械器具の所有者が同一であることを要するか。所有者が異なる場合であっても、両者が一体的な担保設定に合意し登記したときに、同条の適用が認められるかが問題となる。
規範
工場抵当法2条の適用において、抵当権の対象となる土地・建物と、その上に備え付けられた機械・器具は、原則として同一の所有者に属することを要する。しかし、不動産所有者と動産所有者が異なる場合であっても、両者が一体として抵当権を設定することを承諾し、かつ同法3条に基づき機械器具目録を提出して登記がなされた場合には、例外的に同法2条により抵当権の効力が当該機械器具に及ぶと解するのが相当である。
重要事実
債務者であるD鉄工所は、銀行(上告人)との手形取引に際し、自社所有の機械器具を担保に供しようとしたが、銀行から工場抵当を求められた。そこで、D社の代表取締役Eは、個人所有の建物と、その内部にあるD社所有の機械器具に一括して工場抵当法2条による根抵当権を設定することに同意した。Eは担保貸主兼保証人として、銀行との間で建物および機械器具につき根抵当権設定契約を締結し、建物への登記の際に機械器具目録も提出された。その後、この機械器具への効力発生の成否が争われた。
あてはめ
本件では、建物所有者であるEと機械器具所有者であるD社(の実質的代表者E)が、銀行の要求に応じて建物と機械器具を一体として担保に供することを明確に承諾している。また、建物に対する根抵当権設定登記の際に工場抵当法3条に基づく目録の提出も完了している。このように、不動産と動産を一体の担保として扱う意思があり、公示も備わっている以上、形式的に所有者が異なっていることをもって同法2条の適用を否定すべきではない。
結論
本件機械器具には工場抵当法2条による根抵当権の効力が及ぶ。したがって、これと異なる判断をした原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
工場抵当法2条の「所有者同一原則」を緩和した重要判例である。司法試験においては、物権の付加一体物(民法370条)の解釈と対比させつつ、工場抵当法特有の公示制度(目録)を根拠として、関係当事者の合意がある場合の有効性を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)245 / 裁判年月日: 昭和35年7月7日 / 結論: 棄却
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事件番号: 平成24(行ヒ)156 / 裁判年月日: 平成25年7月12日 / 結論: 棄却
滞納者と他の者との共有に係る不動産につき滞納者の持分が国税徴収法47条1項に基づいて差し押さえられた場合における他の共有者は,その差押処分の取消訴訟の原告適格を有する。