工場抵当法第三条の抵当物件目録を提出する場合、軽微な附属物と認められない機械(二馬力モーター付二機筒水圧ポンプ)の如きは、これを具体的に記載するを要し、「以上建物内に在る機械器具其他工具一切」と概括的に記載することはできないものと解すべきである
工場抵当法第三条の抵当物件目録の記載方法
工場抵当法3条,工場抵当登記取扱手続(明治38年司法省令18号)26条、9条
判旨
工場抵当の目的となる機械器具類について抵当権の効力を第三者に対抗するには、当該物件が工場抵当法3条に基づく抵当物件目録に具体的に記載されている必要がある。目録に記載のない物件については、たとえ工場抵当の効力が及ぶ範囲内であっても、競落人はその所有権取得を第三者に対抗できない。
問題の所在(論点)
工場抵当の目的物である機械器具が抵当物件目録に具体的に記載されていない場合、その抵当権の効力を第三者(譲受人)に対抗できるか。また、目録の概括的記載によって対抗力が認められるか。
規範
工場抵当法3条1項の目録は、同条2項および35条により登記簿の一部とみなされ、その記載により登記としての対抗力を生じる。したがって、機械器具類に対する抵当権の効力を第三者に対抗するためには、当該物件が目録に記載されていることを要する。目録の末尾に「一切」等の概括的記載があっても、軽微な附属物を除き、機械器具類は具体的に記載されていなければ対抗力を認められない。
重要事実
訴外会社が工場物件に抵当権を設定し、工場抵当法3条に基づく目録を提出したが、本件物件(2馬力モーター付2機筒水圧ポンプ)は当該目録に具体的に記載されていなかった。目録末尾には「以上建物内に在る機械器具其他工具一切」との概括的記載があった。その後、被上告人が所有者から本件物件を買い受け引渡しを受けた。一方で、抵当権が実行され本件物件を含む形で競売が行われ、上告人がこれを競落したため、上告人と被上告人の間で所有権の帰属が争われた。
あてはめ
本件物件である水圧ポンプは、工場抵当法3条の目録に具体的に記載されていなかった。目録末尾の概括的記載については、軽微な附属物であれば許容されるものの、本件物件のような機械器具は「軽微な附属物」とはいえず、具体的な記載を要する。したがって、本件物件に対する抵当権の効力は対抗力を欠く。その結果、差押の効力も本件物件には及んでおらず、競売開始決定後に所有者から有効に引渡しを受けた被上告人は、競落人である上告人に対し所有権を対抗できる。
結論
本件物件は目録に記載がないため抵当権の対抗力が認められず、これを有効に譲り受けた被上告人が所有権を取得する。上告人の請求は認められない。
実務上の射程
工場抵当(3条抵当)における対抗力の範囲を画定する重要判例である。実務上、機械器具の特定が不十分な目録は対抗力を否定されるリスクがあることを示している。司法試験においては、抵当権の効力の及ぶ範囲(民法370条)と対抗要件(工場抵当法)を区別して論じる際に活用すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)137 / 裁判年月日: 昭和30年10月25日 / 結論: 破棄差戻
処分禁止の仮処分前になされた処分行為に基く権利取得の登記であつても、その登記が右仮処分の登記後になされたものであるときは、これをもつて仮処分が債権者に対抗することはできない。