処分禁止の仮処分前になされた処分行為に基く権利取得の登記であつても、その登記が右仮処分の登記後になされたものであるときは、これをもつて仮処分が債権者に対抗することはできない。
処分禁止の仮処分前の処分行為に基く権利取得とその登記が仮処分登記後になされた場合の効力
民訴法755条,民訴法758条
判旨
不動産処分禁止の仮処分登記後に権利取得の登記がなされた場合、当該権利取得が仮処分前であっても、権利者は仮処分債権者に対してその権利取得を対抗できない。
問題の所在(論点)
不動産の処分禁止仮処分登記前に当該不動産を買い受けた者が、仮処分登記後に所有権移転登記を経由した場合、その権利取得を仮処分債権者に対抗できるか。
規範
処分禁止の仮処分は将来の処分行為を禁ずるものであるが、仮処分登記時に未登記の権利者は、民法177条の法理によりその権利取得を第三者に対抗できない関係にある。したがって、仮処分登記がなされた以上、その後に登記を経由しても、仮処分債権者は登記の欠缺を主張し得る正当な利益を有する第三者にあたるため、仮処分債権者に対して権利取得を対抗することはできない。
重要事実
上告人は本件不動産につき処分禁止の仮処分決定を得て、その登記を経由した。一方、被上告人らは、右仮処分登記より前に、補助参加人に対して本件不動産を売却していたが、補助参加人が所有権移転登記を備えたのは仮処分登記の後であった。補助参加人は、売買という実体上の権利取得が仮処分前であることを理由に、仮処分債権者である上告人に対して所有権取得を対抗できるか否かが争われた。
事件番号: 昭和35(オ)232 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
代金支払が契約の数ケ月後であるとの一事によつては、登記欠缺を主張しえない背信的悪意者とはいえない。
あてはめ
処分禁止の仮処分登記がなされた時点で、補助参加人は売買契約を締結していたものの、未だ登記を備えていなかった。仮処分債権者である上告人は、自己の被保全権利を保全すべき地位にあり、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する。そのため、たとえ実体法上の権利取得が仮処分前であっても、対抗要件たる登記を仮処分登記より後に備えたに過ぎない補助参加人は、上告人との関係では所有権取得を有効に主張できないと解される。
結論
補助参加人は、仮処分後の登記によってその権利取得を上告人に対抗することはできない。
実務上の射程
民事保全法制定前の判例であるが、現行法下における処分禁止仮処分の対抗力(同法58条、62条参照)を基礎づける法理として機能する。司法試験においては、二重譲渡の法理(177条)と仮処分の効力が交錯する場面で、仮処分債権者が「第三者」に該当することを論証する際に活用すべきである。
事件番号: 昭和40(オ)1031 / 裁判年月日: 昭和41年7月28日 / 結論: 棄却
村税滞納処分による差押についても、民法第一七七条の適用があるものと解すべきである。
事件番号: 昭和36(オ)535 / 裁判年月日: 昭和37年10月26日 / 結論: 棄却
処分禁止仮処分前にされた移転契約でも、仮処分後に登記された場合には、所有権移転をもつて仮処分債権者に対抗しえない。
事件番号: 昭和29(オ)237 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の処分禁止仮処分の執行がなされていても、そのことのみによって、仮処分債権者がその後の権利関係の変動において実体法上あるいは手続法上の優先的地位を取得するものではない。 第1 事案の概要:上告人は、対象不動産について処分禁止の仮処分を得ていたが、その後、当該不動産の権利関係に関し、自らが優先的…