一 小麦委託加工および木炭販売を業とする者の玄関口の店舗に接続する帳場の柱に掛けられていた時計は、国税徴収法第一七条にいう営業に必要な器具にあたる。 二 滞納処分による動産の差押にあたり、滞納者が徴税吏員から差押物件の保管を求められ、これを拒絶すると共に、右物件が営業上必要なものであるとの理由で代替物件を提供し、その差押方を申し出た場合は、国税徴収法第一七条に基く代替物件の提供が、適法になされたものと認むべきである。
一 小麦委託加工および木炭販売を業とする者の玄関口の店舗に接続する帳場の柱に掛けられていた柱時計は、国税徴収法第一七条にいう営業に必要な器具にあたるか 二 国税徴収法第一七条に基く代替物件の提供が適法になされたものと認められた事例
国税徴収法17条,国税徴収法22条
判旨
国税徴収法上の代替物提供による差押えの変更は、差押物件の引揚げや保管命令等の最終的な措置が完了する前になされれば、適法な提供として認められる。
問題の所在(論点)
旧国税徴収法17条(現行法に類する規定あり)に基づく代替物件の提供が認められる時期的な限界、および店舗の帳場に設置された柱時計が「営業上必要な物件」に該当するか。
規範
滞納者が営業上必要な物件の差押えを避けるために代替物を提供した場合、徴税吏員が差押物件を引揚げるか、又は差押物件である旨の表示を施して滞納者等に保管を委託するなどの最終的措置を完了する前であれば、法17条(当時)に基づく適法な提供にあたる。この場合、徴税吏員は既に着手した差押えを中止し、提供された代替物につき差押えを執行すべき義務を負う。
重要事実
徴税吏員が滞納者所有の自転車及び柱時計(店舗に接続する帳場に設置されたもの)の差押えに着手し、滞納者に保管を申し出た。滞納者はこれを拒絶し、当該物件が営業上必要であるとして、代わりの小麦5、6叺及び木炭9俵を提供してこれらを差し押さえるよう申し出た。しかし、徴税吏員はそのまま当初の物件の差押えを強行したため、滞納者がその違法性を争った。
あてはめ
まず、柱時計は店舗に接続する帳場の柱に掛けられていたものであり、営業の用に供されていることから「営業上必要な物件」と認められる。次に、代替物の提供時期について、徴税吏員が差押物件の保管を申し出た段階では、まだ物件の引揚げや公示(表示)といった最終的な執行措置が完了していない。したがって、この段階での申し出は適法な提供であり、提供された小麦等の価値が滞納債権(元金・延滞金含む)を上回る以上、徴税吏員は代替物への差押えに切り替えるべきであったといえる。
結論
最終的な差押処分の完了前になされた代替物の提供は適法であり、これを無視して営業上必要な物件を差し押さえることは違法である。
実務上の射程
滞納処分における差押物件の選択の合理性と、差押え着手後の滞納者による抵抗(代替物提供)の法的効力を示す。実務上、差押えが「完了」するまでの時間的幅において、納税者の権利保護を優先させるべき場面を特定する際の基準となる。
事件番号: 昭和32(オ)201 / 裁判年月日: 昭和33年6月17日 / 結論: 棄却
刑事判決で旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前)第八三条第三項によつて追徴していない場合でも、同条第四項によつて関税を徴収することができる