統制額の修正に伴い当然これを賃料額とする旨の特約または増減請求の意思表示があれば格別、統制額の修正の告示があつたからといつて、右統制額が当該賃貸借契約の賃料に何ら影響しない。
地代統制額の修正の賃貸借契約に及ぼす影響
地代家賃統制令5条
判旨
地代家賃統制令に基づく統制額の修正告示は、当然に個々の賃貸借契約の賃料額を変更させる効力を有しない。契約賃料を変更するには、当事者間の合意または増減額請求等の意思表示が必要である。
問題の所在(論点)
地代家賃統制令に基づく統制額の修正告示があった場合に、当事者間の合意や増減額請求といった個別の意思表示を要することなく、当然に修正後の額が契約賃料となるか。公法上の価格統制と私法上の契約内容の変動の関係が問題となる。
規範
地代家賃統制令に基づく家賃統制額修正の告示は、あくまで行政上の最高限度額(統制額)を修正するにとどまる。したがって、当該告示のみによって、直接個々の賃貸借契約における賃料額が当然に変更されるものではない。
重要事実
地代家賃統制令の下で家賃統制額が告示により修正された。これを受け、賃貸人(上告人)は、特段の反対の意思表示がない限り、合意や個別の増額請求がなくても当然に修正後の統制額が契約賃料になると主張して、修正統制額に基づく賃料の支払を求めた。
あてはめ
地代家賃統制令および同施行規則には、告示によって私法上の契約賃料が当然に変更される旨の規定は存在しない。統制額の修正に伴い賃料を変更するためには、(1)当事者間で修正額を賃料とする旨の合意がなされるか、(2)当事者による賃料増減額請求がなされるなどの事情が必要である。本件において、これらの事情がない限り、告示の存在のみをもって賃料が変更されたとみることはできない。
結論
統制額修正の告示があったからといって、当然に修正統制額が個々の賃貸借契約における地代家賃の額となるとは解しえない。
実務上の射程
行政法規による価格制限(強行規定)が私法上の契約関係に与える影響を限定的に解した事例。上限規制が緩和されたとしても、私法上の賃料額を増額させるには別途形成権の行使(賃料増額請求)や合意が必要であるという、公法と私法の峻別を示す基本判例として位置付けられる。
事件番号: 昭和39(オ)570 / 裁判年月日: 昭和40年1月29日 / 結論: 棄却
地代家賃統制令の適用のある賃貸借契約において、統制額の増額に応じて約定賃料額が当然に増額されるものではない。