判旨
手形が書き換えられた場合に、それが旧手形の支払に代えて交付された代物弁済にあたるか否かは、証拠に基づき事実認定されるべき問題であり、これを否定した原審の判断には違法がない。
問題の所在(論点)
手形の書換えがあったとされる状況において、新手形の交付が旧手形債務の消滅を伴う代物弁済(民法482条)にあたるかという事実認定を、証拠不十分として否定した原審の判断に違法があるか。
規範
既存の債務(旧手形債務)の支払に代えて新たな手形(新手形)を交付する行為が、民法482条の代物弁済に該当するか否かは、当事者の意思解釈および客観的事実関係に基づき、旧債務を消滅させる合意があったかという事実認定の問題に帰着する。事実審が証拠に基づき代物弁済の事実を認めないと判断することは、その裁量権に属する。
重要事実
上告人は、2通の旧手形が1通の新手形に書き換えられた事実を主張し、この新手形の交付は旧手形債務に対する代物弁済としてなされたものであると主張した。しかし、原審は、手形書替の事実や、新手形が旧手形の支払に代えて交付されたという事実を認めるに足りる的確な証拠がないとして、上告人の主張(代物弁済の成立)を否定した。これに対し、上告人が事実認定の違法を理由に上告した事案である。
あてはめ
原審は、提出された各証拠を検討した結果、単なる手形書替の事実のみならず、新手形が旧手形の支払に代えて交付されたという事実についても、これを認めるに足りる証拠がないと判示した。このような証拠の評価および事実の認定は、事実審の合理的な裁量に属する事柄である。本件において原審がこれらの事実を否定したプロセスに、論理的矛盾や証拠法則違反といった違法は認められない。
結論
新手形の交付を代物弁済と認めるに足りる証拠がないとした原審の認定は適法であり、代物弁済の成立は否定される。上告棄却。
実務上の射程
実務上、手形の書換えがなされた場合、特段の事情がない限り、旧債務を消滅させる「代物弁済」ではなく、支払猶予や担保のために行われるのが通常である。本判決は、代物弁済を主張する側がその合意の事実を厳格に立証する必要があることを示唆しており、事実認定の問題として処理されるべきことを確認している。
事件番号: 昭和32(オ)334 / 裁判年月日: 昭和36年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形割引の法的性質について、実態に即して手形貸付(消費貸借)であると解する原審の判断を適法として維持した。 第1 事案の概要:上告人は、本件約束手形の割引が手形の売買にあたると主張して争ったが、被上告人は当該割引が手形貸付の性質を有するものであると主張した。第一審および原審は、証拠に基づき、本件手…