判旨
旧手形債務が代物弁済により消滅して旧手形がいわゆる手残り手形となった事実、および新手形債務が弁済により消滅した事実が認められない場合、手形債務の消滅は否定される。
問題の所在(論点)
旧手形債務が代物弁済によって消滅したといえるか、また、新手形債務が弁済により消滅したといえるか。これらを否定した原判決に理由不備等の違法があるか。
規範
債務の消滅を主張する者は、代物弁済(民法482条)や弁済(同法473条)といった消滅原因となる具体的事実を立証しなければならない。また、手形債務の更改や更新において、旧手形債務の消滅(いわゆる手残り手形の発生)や、新たに振り出された手形債務の完済が認められない限り、当該債務は存続するものと解される。
重要事実
上告人は、旧手形債務が代物弁済によって消滅し、当該手形はいわゆる「手残り手形」であると主張した。また、新手形債務についても弁済によって消滅したと主張し、原審の認定に理由不備や理由齟齬があると争った。
あてはめ
原審は、上告人が主張する旧手形債務の代物弁済による消滅、および旧手形が手残り手形であるという事実を否定している。さらに、新手形債務が弁済によって消滅したという事実も否定しており、これらの点について順次認定判断を示している。判決の論理過程に矛盾は認められず、上告人の主張を排斥した判断は妥当である。
結論
本件旧手形債務および新手形債務の消滅は認められず、原判決に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
手形債務の更新(書換)において、旧債務の消滅や新債務の弁済を主張する際の立証責任の所在と、事実認定の枠組みを確認する際に参照される。特段の理論的新規性というよりは、事実認定の合理性を維持した事例である。
事件番号: 昭和34(オ)73 / 裁判年月日: 昭和36年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形が書き換えられた場合に、それが旧手形の支払に代えて交付された代物弁済にあたるか否かは、証拠に基づき事実認定されるべき問題であり、これを否定した原審の判断には違法がない。 第1 事案の概要:上告人は、2通の旧手形が1通の新手形に書き換えられた事実を主張し、この新手形の交付は旧手形債務に対する代物…