判旨
当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を明確に認めた場合、裁判所は当該事実を裁判の基礎としなければならず、これに反する判断をすることはできない。
問題の所在(論点)
当事者が裁判上の自白をした事実(手形の呈示等)について、裁判所がこれと異なる事実認定を行ったり、判断を遺脱したりすることが許されるか。特に、自白の撤回や主張の変更が認められる範囲が問題となる。
規範
口頭弁論において当事者が相手方の主張する事実を認める旨の陳述(自白)をした場合、当該事実については証拠調べを要せず裁判の基礎としなければならない。また、一度なされた自白が適法に取り消されない限り、裁判所はこれに反する事実を認定することはできない。
重要事実
上告人と被上告人の間の約束手形請求事件において、上告人は原審(控訴審)の口頭弁論期日で、被上告人が主張する本件手形の呈示があった事実を明らかに認めた。また、上告人は当初、本件手形は融通手形であると主張していたが、その後の弁論期日において、手形は支払済みであること、及び従前の残金に関する主張を取り消す旨の陳述を行った。
あてはめ
上告人は、原審の記録によれば、被上告人が主張する手形呈示の事実を明確に認めている。このため、裁判所が手形呈示がなかったと判断することは許されず、上告人の主張(判断遺脱等の不服)は採用できない。また、上告代理人は融通手形の主張と矛盾する内容の陳述を口頭弁論で行っており、これは従来の主張を放棄・変更したものと認められる。したがって、変更前の主張(融通手形である旨)について判断が示されなかったとしても、それは判断遺脱には当たらない。
結論
自白した事実は裁判所を拘束するため、上告人の主張は採用できず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟法における裁判上の自白(不要証効・審判権の拘束)の典型例。弁論主義の第一テーゼに基づき、当事者間に争いのない事実に反する認定ができないことを示す。実務上は、一度なされた自白の撤回や主張の矛盾が後の上告理由として認められないことを確認する際に参照される。
事件番号: 昭和26(オ)270 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を認めた場合、裁判上の自白が成立し、その事実に拘束力が生じるため、特例法上の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の口頭弁論において、被上告人が主張した事実を認めていた。その後、上告人は当該事実に関連して、民事上告事件の審判の特例に関…