判旨
手形所持人が支払呈示の事実を主張したのに対し、振出人が支払拒絶の事実を認めつつ呈示の事実を争わない場合、弁論の全趣旨に基づき呈示の事実を自白したものとみなすことができる。
問題の所在(論点)
手形金請求訴訟において、原告が主張した「手形呈示の事実」に対し、被告が明示的に争わず支払拒絶のみを認めている場合に、呈示の事実を自白したものとみなすことができるか。
規範
当事者が相手方の主張した事実を争わない場合、あるいは弁論の全趣旨からみてこれを争ったものと認められない場合には、民事訴訟上の自白(擬制自白)が成立し、裁判所はその事実を判決の基礎としなければならない。
重要事実
被上告人(手形所持人)は、支払期日に支払場所で本件手形を呈示して支払を求めたが支払を受けられなかったと主張して、手形金の支払を求めた。これに対し、上告人(振出人)は手形金の支払をしていない事実は認めたが、手形呈示の事実については記録上明らかに争わず、また弁論の全趣旨によってもこれを争ったとは認められなかった。
あてはめ
本件では、被上告人が手形呈示の事実を明確に主張している。一方、上告人は支払を拒絶している事実は認めつつ、呈示の事実については記録上争った形跡がない。このような態度は、弁論の全趣旨に照らせば、相手方の主張事実を黙認したものと解される。したがって、上告人は呈示の事実を自白したものとみなされる。
結論
上告人は手形呈示の事実を自白したものとみなされるため、手形呈示の主張や証拠が欠けているとする上告人の主張は採用できない。
実務上の射程
手形訴訟における呈示の事実だけでなく、民事訴訟一般における「争わない事実」の取り扱い(擬制自白)に関する判断枠組みを示す。要件事実の主張に対し、相手方が沈黙または無関係な反論に終始する場合の事実認定のあり方を検討する際に参照すべき判例である。
事件番号: 昭和35(オ)1241 / 裁判年月日: 昭和36年8月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審以来、当事者が相手方の主張する請求原因事実を争っていないことが明白である場合、その事実を前提としてなされた判断に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、第一審以来、被上告人が主張する請求原因事実について争っていなかった。しかし、上告審において上告人は「事実は争っていた」と主張し、原判決には…