刑事上罰すべき他人の行為(詐欺)によつて裁判上の自白がなされた場合、右自白者が、これを理由としてその無効、取消を主張した以上、裁判上の自白の効力は認むべきではない。
刑事上罰すべき他人の行為によつてなされた裁判上の自白の効力
民訴法257条,民訴法420条1項5号
判旨
裁判上の自白が他人の刑法上罰すべき行為によってなされた場合には、再審事由(旧民訴法420条1項5号)に準じて、当該自白の撤回が認められる。
問題の所在(論点)
裁判上の自白が他人の詐欺行為等の刑事罰に値する行為によってなされた場合、当該自白の撤回(効力の否定)が認められるか。
規範
裁判上の自白は原則として撤回できないが、その自白が他人の刑法上罰すべき行為によって誘発されたものである場合には、民事訴訟法上の再審事由(現行338条1項5号参照)を類推し、自白の効力を否定し、またはその撤回を認めるべきである。
重要事実
上告人は原審の口頭弁論において、陳述したものとみなされた答弁書記載の自白について、訴外人の詐欺行為(刑法246条2項該当)によってなされたものであるから無効であり、少なくとも取り消し得ると主張した。しかし、原審は事実摘示においてこの主張を記載せず、判決の全趣旨に照らしても、当該自白の効力について何ら判断を示さなかった。
あてはめ
上告人が主張した「刑法246条2項に該当する詐欺行為により自白するに至った」という事実は、旧民訴法420条1項5号(現行338条1項5号)の再審事由に準ずる事由である。証拠上、この主張事実が肯定されるのであれば、裁判所としては本件自白の効力を認めるべきではなかったといえる。それにもかかわらず、原審がこの主張について判断を与えていないことは、判断遺脱の違法がある。
結論
自白が他人の刑事罰に触れる行為によってなされた場合は自白の撤回が認められる。本件ではその主張に対する判断を遺脱した原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
自白の撤回が認められる「反真実かつ錯誤」以外の例外類型(刑事罰事由)を示す重要判例である。答案上では、自白の撤回の可否が問題となる場面で、錯誤による撤回の要件を満たさない場合でも、本判例を根拠に再審事由相当の事情(強迫・詐欺等)があれば撤回可能であると論じる際に使用する。
事件番号: 昭和29(オ)651 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、自白した事実が真実に反することの証明があるときは、特段の事情がない限り、錯誤に出たものと推定して認めることができる。 第1 事案の概要:本件訴訟において、被上告人が行った自白について、後にこれが真実に反するものであるとして撤回の可否が争点となった。原審(第2審)は、提出された…