自白の取消があつた場合において、自白した事実が真実に合致しないことの証明がある以上、その自白は錯誤に出たものと認めて差支えがない。
自白の取消と錯誤。
民訴法257條
判旨
裁判上の自白の撤回が許されるための要件について、自白が錯誤に基づくことの立証は、自白が真実に反することの証明があれば足りると判示した。
問題の所在(論点)
裁判上の自白の撤回を認めるための要件、特に「錯誤」の認定方法および「取消し」の意思表示の要否が問題となる。
規範
裁判上の自白を撤回するには、(1)自白が錯誤に基づいていること、および(2)自白の取消しを主張することが必要である。そして、自白が錯誤に基づくことについては、自白した事実が真実に反することの証明があるときは、その自白は錯誤に出たものと推定することができる。
重要事実
被上告人(原告)は、訴訟において3万円の小切手に関する事実について自白をしていたが、後にこの主張を撤回し、これと相容れない事実を主張した。上告人(被告)は、自白の撤回には錯誤の主張と取消しの意思表示が不可欠であるとして、原審が自白の取消しを認めたことを違法であると主張して上告した。
あてはめ
まず、被上告人が従前の主張を撤回し、これと矛盾する事実を主張したことは、自白の取消しを主張したものと解するのが相当である。次に、錯誤の存否については、被上告人の供述等の資料により、自白した事実が真実に合致しないことが証明されている。自白が真実に反する以上、特段の事情がない限り、その自白は錯誤に基づくものと認めることができる。したがって、原審が錯誤の存在を認定し、自白の取消しを認めた判断に違法はない。
結論
自白が真実と合致しないことの証明があれば、錯誤に基づくものと認めることができるため、本件の自白撤回は有効である。
実務上の射程
自白の撤回における「反真実」と「錯誤」の要件について、後者の立証を前者の証明により容易にする実務上の重要な指針である。答案上は、撤回を主張する側が真実に反する事実を立証することで、錯誤を事実上推定させる論法として用いる。
事件番号: 昭和30(オ)497 / 裁判年月日: 昭和31年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、自白が真実に反し、かつ、錯誤に出たことの証明がある場合に限り許される。自白が真実に反しない以上、錯誤の有無を判断する必要はない。 第1 事案の概要:上告人らは、訴訟においてなされた自白が錯誤に基づくものであると主張し、その取消(撤回)を求めた。原審は、当該自白に反する事実の存…