判旨
裁判上の自白の撤回は、自白が真実に反し、かつ、錯誤に出たことの証明がある場合に限り許される。自白が真実に反しない以上、錯誤の有無を判断する必要はない。
問題の所在(論点)
裁判上の自白の撤回が認められるための要件、および「真実に反すること」の証明がない場合に「錯誤」の有無を判断する必要があるか。
規範
適法の手続によってなされた裁判上の自白の撤回は、①自白が真実に反すること、および②錯誤に出たことの証明がある場合に限り、例外的に許される。
重要事実
上告人らは、訴訟においてなされた自白が錯誤に基づくものであると主張し、その取消(撤回)を求めた。原審は、当該自白に反する事実の存在を認めるに足りる証明がないと認定し、撤回を認めなかった。これに対し、上告人らは、原判決が錯誤の有無について判断していないことは理由不備の違法があると主張して上告した。
あてはめ
自白の撤回要件は「真実反抗」および「錯誤」の重畳的要件である。本件において、原審は当該自白に反する事実の存する証明がないと認定しており、要件①(真実反抗)が否定されている。自白が真実に反しない以上、要件②(錯誤)の有無を検討するまでもなく撤回は認められない。したがって、錯誤の有無について判示しなかった原審の判断に違法はない。
結論
本件自白の撤回は認められず、錯誤の有無について判断を要しないとした原判決は妥当である。
実務上の射程
自白の撤回要件(反真実・錯誤)の基本判例。実務上、反真実の証明があれば錯誤は推定されると運用されるが、本判決はあくまで両要件が必要であることを前提とし、一方が欠ければ他方を判断する必要がないという審理順序を示した点に意義がある。
事件番号: 昭和24(オ)219 / 裁判年月日: 昭和25年7月11日 / 結論: 棄却
自白の取消があつた場合において、自白した事実が真実に合致しないことの証明がある以上、その自白は錯誤に出たものと認めて差支えがない。