家屋を売却し、その明渡を約した者が、約定した期日までに明渡義務の履行ができないときは遅延日数一日につき損害金として金一万円を支払う旨約した場合も、買主において右家屋を自己の営業拡張に充てるため早急の明渡を欲したこと等原判決認定の右契約締結に至る事情(原判決の引用する第一審判決理由参照)からみれば、他に特段の事情の認められないかぎり、右損害賠償額の予約をもつて直ちに公序良俗に反する無効のものということはできない。
一日金一万円の違約金のとり決めが無効ではないとされた事例
民法90条,民法420条
判旨
損害賠償額の予定が、公序良俗に反し無効とされるためには、無知窮迫に乗じて不当な暴利を計るなどの特段の事情が必要であり、一日金一万円という金額のみをもって直ちに無効とすることはできない。
問題の所在(論点)
損害賠償額の予定が、公序良俗違反(民法90条)として無効とされるための要件、および「一日金一万円」という予定額の設定が直ちに公序良俗に反するか。
規範
損害賠償額の予定(民法420条1項)が、公序良俗(民法90条)に反して無効となるのは、契約の締結に至る事情等に照らし、相手方の無知窮迫に乗じて不当な暴利を計る行為と認められるなど、特段の事情が存する場合に限られる。
重要事実
上告人と被上告人との間で、損害賠償額を一日金一万円とする予約が締結された。上告人は、この予約が自らの無知窮迫に乗じて不当な暴利を計るものであり、公序良俗に違反し無効であると主張した。しかし、当該主張は原審においてなされておらず、立証もなされていなかった。
あてはめ
本件において、契約締結に至る事情を検討しても、上告人の主張する「無知窮迫に乗じて不当な暴利を計る行為」を裏付ける事実は原審で立証されていない。また、他に公序良俗違反を基礎付ける特段の事情も認められない。したがって、一日金一万円という損害賠償額の予定が直ちに公序良俗に反し無効であるとはいえない。
結論
本件損害賠償額の予定は公序良俗に反せず有効であり、上告を棄却する。
実務上の射程
損害賠償額の予定の有効性が争われる事案において、金額の多寡だけでなく、締結過程における公序良俗違反の主観的・客観的要素(暴利行為性)が必要であることを示す射程を持つ。答案上は、民法420条による減額が認められない現行法下で、90条による無効を主張する際のハードルの高さを示すものとして活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)126 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
第二審判決理由を是認した判決。